視神経乳頭から畝のように延びる網膜のひだが、視力不良が疑われる乳児の眼底にみられることがあります。
これは増殖膜の牽引によってできる「網膜ひだ」で、以前は鎌状網膜剥離と呼ばれていました。
東範行他: 家族性滲出性硝子体網膜症の診療の手引き。日本眼科学会雑誌 121:487-97.2017
瘢痕期の未熟児網膜症https://meisha.info/archives/893で見られることがありますが、家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)や胎生期の硝子体血管系遺残(PFV)での増殖膜による牽引によることもあります。
網膜ひだが黄斑部を巻き込んで中心窩の構造が失われていると0.1以下の著しい低視力になります。
しかし、黄斑が耳側に引っ張られるものの、網膜ひだとして隆起するほどではない牽引乳頭や黄斑偏位であれば、0.1以上のそこそこの視力が得られることもあります。図の症例の矯正視力は0.7でした。
FEVRはFamilial exudative vitreoretinopathyの頭文字です。
遺伝子異常による網膜血管の発達異常で、左右差はあるものの両眼性の病気です。
常染色体優性遺伝で図のように親子でみられる場合の診断は難しくはありませんが、他の遺伝形式の場合や孤発例も少なくありません。
PFVはPersistent fetal vasculatureの頭文字で、以前は第一次硝子体過形成遺残(PHPV: Persistent hyperplastic primary vitreous)と呼ばれていた病気です。
遺伝性はなく、胎生5-10週で形成される硝子体動脈と水晶体血管膜から成る硝子体血管系の異常増殖または遺残による変化です。
FEVRとは異なり多くは片眼性です。
東範行他. 網膜硝子体の先天異常. In: 東範行, ed. 小児眼科学: 三輪書店.302-25. 2015
胎生裂閉鎖異常に伴って、右図のような下方に向かう網膜ひだとなることもあります。