血管内皮増殖因子(VEGF)が関係する虚血性網膜疾患https://meisha.info/archives/321はレーザー光凝固治療の主な対象で、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、放射線網膜症以外に未熟児網膜症も含まれます。
未熟児網膜症は網膜血管の成長が未熟なほど発症の危険性が高まり、
東範行: 綜説51:未熟児網膜症. 日本眼科學会雜誌 116:683-702,.2012
出生体重1,500 グラム未満で60%、在胎28週未満の児では100%に発症します。
http://www.japo-web.jp/info_ippan_page.php?id=page14
正常な目の眼底の造影写真では、枝分かれを繰り返して広がる網膜血管が、図のように観察できますが、未熟な網膜血管とはどういうことでしょうか?
網膜血管は母胎内での目の成長に伴って完成しますが、その途中で出生して血管の成長が停止すると未熟児網膜症を発症します。
周辺の網膜には血管が来ていない無血管野が残り、糖尿病網膜症の無灌流野(NPA)と同様、VEGFの発生源になります。
図は成人になって発見された軽症の未熟児網膜症の眼底造影写真です。
VEGFは血管を伸ばすよう、隣接する網膜内の血管に働きかけます。
この反応が緩やかに起これば、時期は遅れるものの、網膜血管が無血管野の中を水平方向に伸展して、周辺網膜までカバーする正常の網膜血管網が完成します。
しかし生後、保育器内での高濃度酸素などの要因で網膜血管が収縮すると、網膜内を周辺に向かう本来の水平方向の血管伸長ではなく、硝子体に向かって垂直方向に伸びる未熟な新生血管が発生します。
新生血管周囲にはコラーゲンなどの線維蛋白が分泌されて増殖膜を作り、これが収縮すると新生血管の根元の網膜を引っ張って牽引性網膜剥離を起こします。
その結果、網膜全体が剥がれると失明します