• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

近視、遠視、老視

患者さんの誤解

眼科医として患者さんの話を聴いていると、近視、遠視、老視(老眼)について以下のように誤って理解していることが多いと感じます。
「近視は視力の悪い目
「遠視は遠くがよく見える視力の良い目」
「老眼になると近くが見えにくい

遠見裸眼視力と調節力

「近視の視力が悪く、遠視で視力がよい」というのは「視力=遠見裸眼視力」と理解しているためです。
遠見裸眼視力https://meisha.info/archives/1514は5メートルの距離で測定するメガネなしの視力です。
調節力が十分ある若いヒトの目では、眼前の近点から遠点https://meisha.info/archives/1507までの範囲内(明視域)でピントが合います。

近視の誤解

正視と軽い遠視では5メートルの視力表が明視域内なので、遠見裸眼視力は良好です。
一方、近視では5メートルの視力表がこの範囲の外のため、遠見裸眼視力は不良です。
しかし適切な凹レンズの近視メガネをかければ正視と同じになり、(遠見)矯正視力は良好です。
眼科医は通常「視力=(遠見)矯正視力」だと考えているので、「近視だけでは視力は不良にならない」と説明します。

遠視の誤解

「遠視は遠くがよく見える視力の良い目」というのは軽い遠視で、しかも調節力が十分にある若い時期の話です。
歳をとって老視(老眼)になると近点が遠ざかって遠点に接近します。
正視の目では裸眼では近くがよく見えなくなりますが遠くはOKです。
一方、遠視の遠点は無限遠よりも先で理論上は眼球後方です。
そのため明視域は眼前には存在せず、凸レンズの遠視メガネがなければ遠くがはっきり見えません。
近くを見るにはさらに分厚い老眼鏡(遠視用近用メガネ)が必要です。

老視の誤解

「老眼(老視)になると近くが見えなくなる」のは正視と遠視では当てはまり、一見正しそうですが、近視では当てはまりません
近視でも歳をとると調節力が低下する老視になって遠点と近点が接近します。
しかし元々遠点が眼前近くなので(-3Dの近視では眼前33センチメートル)、裸眼で近くはよく見えます
ただし近視のメガネをかけた状態では正視と同じで、近くはよく見えません。
老視は近くが見えなくなるのではなく、調節力が低下して見える範囲(=明視域)が狭くなる加齢現象です。

目の病気による視力不良はメガネで解決しない矯正視力不良

なお近視、遠視は乱視とともに屈折異常と呼ばれ、老視は調節異常と呼ばれますが、いずれもメガネで解決します。
一方、白内障、緑内障、黄斑変性など多くの目の病気での不良な見え方は、矯正視力が不良なのでメガネでは解決しません。