網膜色素変性https://meisha.info/archives/726は夜盲と進行性の視野狭窄https://meisha.info/archives/878を特徴とする遺伝性の病気です。
同様の夜盲と視野狭窄が特徴の病気にコロイデレミアchoroideremiaがあります。
原因遺伝子はX染色体長腕(Xq 21.2)上に位置するRab escort protein-1 (REP1) で、網膜色素上皮 (RPE)と視細胞が障害されます。
貝殻模様に広がる脈絡膜委縮を通して、白色の強膜が透見できる特徴的な眼底変化を示します。
Xue K et al. Beneficial effects on vision in patients undergoing retinal gene therapy for choroideremia. Nat Med 2018;24:1507-1512.
進行すると中心窩付近の狭いエリア以外の網脈絡膜は完全に委縮します。
しかし網膜内層の障害は軽度のため、進行した網膜色素変性眼でみられる網膜血管の狭細化や視神経乳頭の蒼白化はコロイデレミアでは目立ちません。
眼底自発蛍光では黄斑部に境界明瞭な自発蛍光エリアが残るのみです。
下図右で黄斑部だけでなく周辺も白く見えるのは、RPEからの自発蛍光ではなく強膜内のコラーゲン線維由来の自発蛍光のためです。
コロイデレミアの診断にはREP1遺伝子異常の検出が必要ですが、X染色体潜性(劣性)遺伝であるコロイデレミアでは女性保因者に特徴的な変化が見られることが役に立ちます。
図は上記患者さんの母親と姉の眼底写真で、夜盲や視野異常などの異常は訴えませんが不規則な脱色素性の変化がみられます。
これは保因者のRPE細胞中で、正常と異常の2本のX染色体の不活化がランダムに生じる結果です。