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X連鎖性若年網膜分離症 XLRS

眼軸が延長する強度近視眼https://meisha.info/archives/940では網膜が前後方向に牽引される結果、OCTで網膜内層に空隙を生じる網膜分離症がみられます。
この変化が遺伝子の異常によって若年男性の両眼にみられる場合は、X連鎖性若年網膜分離症XLRS: X-linked juvenile retinoschisisです。
難病指定される黄斑ジストロフィの6病型のうちのひとつです。https://meisha.info/archives/3495

X連鎖性若年網膜分離症

多くは幼少期から学童期に両眼の視力低下で気づかれます。
典型例ではカラー眼底写真や眼底自発蛍光写真で黄斑部に車軸状の変化spoke wheel patternがみられます。
OCTでは内顆粒層に柱状構造pillar がみられ、多数の網膜分離腔を隔てています。

陰性型ERG

決め手は暗順応下、最大刺激光で杆体と錐体両者の反応をみる通常の全視野刺激ERGです。
通常、b波振幅はa波よりも大きいので山型の波形ですが、XLRSではb波が小さくなるため、基線位置よりも下がる陰性型を示します。
黄斑ジストロフィの診断ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:424-42.2019

原因遺伝子:RS1

原因遺伝子はX染色体上にあり、retinoschisinと呼ばれるタンパクをコードするRS1です。
retinoschisinは視細胞と双極細胞から分泌されて細胞間の接着に関わっています。
retinoschisinが異常となるXLRSでは、網膜内層での細胞接着が障害されて網膜分離を生じます。
Wu WW et al: RS1, a discoidin domain-containing retinal cell adhesion protein associated with X-linked retinoschisis, exists as a novel disulfide-linked octamer. J Biol Chem 280:10721-30.2005