角膜と虹彩で挟まれた空間は隅角https://meisha.info/archives/529と呼ばれ、その内面は図左のように角膜裏面、線維柱帯、強膜、毛様体、虹彩表面で構成されます。
毛様体と強膜の境には縦走毛様体筋(毛様筋縦走部)が走り強膜岬に付着します。
鈍的眼外傷では隅角血管の破綻によって前房出血https://meisha.info/archives/484を生じることがあります。
その際の解剖学的損傷部位は下記の3種類に大別されます。
1. 虹彩離断(上図右の黄三角):虹彩根部が毛様体から離断します。
2. 隅角離開(上図右の緑三角):毛様体がその内部で裂けることによって強膜岬と虹彩根部の間の距離が拡大します。
英語ではangle recession(隅角後退)と呼ばれますが、日眼の用語集では隅角離開とされています。
白木邦彦: 鈍的眼外傷と前房隅角. 眼科 52:637-41.2010
隅角底には毛様体裂隙部が露出し、その表面には次の毛様体解離とは異なり縦走毛様体筋を含む毛様体組織が観察されます。
3. 毛様体解離(上図右の赤三角):強膜から毛様体が剥がれて、房水が上脈絡膜腔に流れ込むため遷延する低眼圧の原因となります。
隅角底には白色の強膜組織が観察されます。
鈍的外傷後、数年以上を経過して発症する開放隅角緑内障は外傷性緑内障と呼ばれます。
眼圧上昇は隅角離開に伴って障害された線維柱帯の瘢痕形成による房水流出障害と考えられます。
山上淳吉. 外傷性緑内障. In: 杉山和久, 谷原秀信, eds. 眼科臨床エキスパート:緑内障治療のアップデート: 医学書院.92-7. 2015
Aさんは右目の視力低下と眼痛を訴えて近医眼科を受診しました。
矯正視力は0.9/1.2、右目の角膜には浮腫がみられ眼圧は68/16mmHgでした。
緑内障点眼薬とダイアモックス内服を指示され、翌日紹介された大学病院初診時には眼圧は20/18mmHgと正常化していました。
図上段は正常隅角で、強膜岬と虹彩根部の間は暗い毛様体表面(毛様体帯)が観察されます。
一方下段のAさんの隅角では、強膜岬と虹彩根部の間の隅角離開部に縦走毛様体筋を含む毛様体組織が付着しているのが観察されます。
保管されてあった以前のカルテによると、20年前の13歳の時にAさんの右目には至近距離から発射されたBBガンの玉が当たり、外傷性白内障に対するPEA/IOL手術既往がありました。
本記事は2021/2/8に初回投稿した[外傷性緑内障]を削除して改変したものです。