高齢者の下眼瞼内反は下眼瞼牽引筋腱膜(Lower Eyelid Retractor:LER)https://meisha.info/archives/1148の弛緩断裂による眼瞼自体の内方回旋が原因で、保険点数区分 K217-3の眼瞼下制筋前転法(LER advancementの日本語訳)が根本治療になります。
村上正洋: 眼瞼内反症手術(眼瞼下制筋前転法). 臨床眼科 76:1031-7.2022
一方、小児の睫毛内反ではLERから皮下に伸びる皮膚穿通枝が未発達で、眼瞼自体ではなく余剰皮膚が内反します。https://meisha.info/archives/589
余剰皮膚を緊張させ牽引する目的で K217-1、縫合法(通糸法、スネレン手術とも呼ばれる)またはK217-2の皮膚切開法(ホッツ変法)が行われます。
上眼瞼でも睫毛が角膜に向かうための睫毛内反が問題になるケースがあり、多くは日本人に多い[一重まぶた]が原因です。
その手術は下眼瞼の縫合法と類似し、手技は美容外科で行われる重瞼手術と同様です。
まつげが両眼の角膜に接触し、そのための掻痒感がひどく手術を希望して近医から紹介されました。
両側の下眼瞼内側で睫毛が角結膜に接触し、右上眼瞼は二重まぶたで睫毛接触はないものの、左上眼瞼は一重まぶたで多数の長い睫毛が角膜に接触していました。
局所麻酔での手術も可能ですが、本人家族の希望で全身麻酔にて、両側の下眼瞼縫合法手術と左の上眼瞼の重瞼手術(下眼瞼縫合法とほぼ同じ手技)を行いました。
左上まぶたでは翻転した瞼板上方の円蓋部結膜から6-0ナイロンのU字縫合の針を刺入(図左)し、皮膚側の2か所の切開創に出した(図右)のち皮下をくぐらせて行う埋没縫合を3か所で施行しました。
両側の下眼瞼は内眼角よりに各1個所で縫合法を行いました。
1週間後の写真では睫毛接触はなく、両上まぶたの重瞼線のバランスはよく、下眼瞼のしわも目立ちません。