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先天睫毛内反の手術

眼瞼の解剖と先天睫毛内反

下眼瞼後葉瞼板下眼瞼けん引筋腱膜(LER: Lower eyelid retractor)で後方に引っ張られています。
高齢者の退行性眼瞼内反はこのLERが弛緩あるいは瞼板からはずれることで、瞼板が内反して睫毛が角膜に接触するようになります。
一方、先天睫毛内反ではLERは正常ですが、そこから眼輪筋を貫いて眼瞼皮膚に伸びる皮膚穿通枝が未発達です。
そのため皮下組織がたるんで睫毛根のある眼瞼皮膚が内方に回転することが原因です。
角膜をこする睫毛(まつ毛)による上皮障害で、眼痛、羞明、流涙の症状を示します。
3歳までに自然治癒する傾向がみられますが、それ以後に角膜障害が持続する場合は手術が勧められます。

通糸法と皮膚切開法

初回の手術はスネレン法と呼ばれる通糸法が広く行われています。
これは非吸収性の糸で眼瞼結膜と眼瞼縁の皮膚を結ぶように埋没縫合して皮膚穿通枝の代用とする術式です。

再発する場合は皮膚切開法であるホッツ変法が選択されます。
眼瞼縁に平行に皮膚を切開して、裏面の眼輪筋など余剰組織を切除し、皮膚を下方にけん引しつつ瞼板に縫着する手術です。

睫毛根切除

それでも再発した場合、まつ毛がなくなることを容認できるようなら睫毛根切除術を行う場合があります。
睫毛列を挟むようにメスで平行に2本の切開を行い、睫毛根部を含む皮膚を楔状に切り取ります。
切開面は自然に癒着するので縫合は不要です。
睫毛根切除高齢者多発睫毛乱生再発退行性眼瞼内反にも有効です。

手術の動画は下記サージカルボックスの眼形成眼科外科の動画からみることができます。https://surgicalbox.jp/