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ピット黄斑症候群

視神経乳頭の表面は正常でも陥凹していますが、この乳頭陥凹とは別に円形または楕円形のさらなる小さい窪みが存在することがあり、(視神経)乳頭ピットoptic disc pitと呼ばれます。
この視神経乳頭の奇形に黄斑部網膜の分離や剥離が合併する病態は(乳頭)ピット黄斑症候群optic disc pit maculopathy (optic disc pit-associated maculopathy)と呼ばれます。
平形明人: 乳頭ピット黄斑症候群の診断と治療、臨床眼科 72:250-5.2018

症例:10歳男児

A君は左眼の視神経乳頭の異常を指摘されて2003年に大学病院眼科を紹介されました。
左眼矯正視力は1.2と正常でしたが、視神経乳頭縁の4時部位に褐色の小窩が検眼鏡的に確認され、乳頭ピットと考えられました。
黄斑剥離は認められず、当時使用できた初期のOCT装置では乳頭構造の詳細は不明でした。

6年後の16歳時に左眼の視力不良(0.3)を訴えて再度受診しました。
視神経乳頭に連続する漿液性網膜剥離がみられ、乳頭ピット黄斑症候群と考えられました。
2か月の経過観察で改善なく、25G硝子体切除術を行いました。
後部硝子体剥離PVDを作成した後、ケナコルトで染色した網膜面上の硝子体線維を除去し、20%SF6ガスで硝子体液ガス置換を行いました。
1年後には網膜下液はほぼ消失して視力は0.6に改善しました。
その際には乳頭ピットの深い陥凹もOCTにて撮影されています。