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外転制限を伴う強度近視眼の内斜視

固定内斜視は眼軸が高度に延長した強度近視眼において、上直筋と外直筋の間から眼球後半部が脱出する結果、内下転位置で眼球が固定されて動かなくなる病態です。https://meisha.info/archives/5083
そこまでは至らないものの、同様のメカニズムで外転制限と内斜視を示し同側性複視https://meisha.info/archives/4557を訴える強度近視眼は表のような種々の名称で呼ばれ、学会でも混乱を生じています。
山上明子 他: 強度近視に伴う内斜視の用語の混乱について. 神経眼科 38:65-7.2021

治療として通常の内直筋後転ではなく上外直筋縫着術(横山法)が推奨されています。
横山連: 病的近視に起因する斜視の診断と治療. あたらしい眼科 32:1419-24.2015

症例:55歳男性

1年前から内斜視が目立つようになってきたとして近医眼科から紹介されました。
屈折は-19.5/-20Dの最強度近視、矯正視力 (0.7)/ (1.0)、眼位は近見55△base out、遠見70△base outの内斜視で、外転制限はありますが、ある程度の眼球運動は可能です。(図左)
両眼視機能の低下のためか同側性複視の訴えははっきりしません。
眼窩の冠状断MRI(図右)では両側とも上/外直筋の間から眼球が脱出しかけていました。

屈折矯正目的のPEA/IOL

まずは強度近視の屈折矯正を主目的として両眼のPEA/IOLを行いました。https://meisha.info/archives/509
術後、裸眼視力は0.6/0.3、矯正視力は (1.2)/ (1.0)と良好で、よくみえるようになったことについては満足されました。

眼位矯正手術

裸眼、眼鏡下のいずれでも複視の訴えはありませんでしたが、眼位の外見的な改善を希望されたので、右眼に対しては上外直筋縫着術(横山法)https://meisha.info/archives/1424を行いました。
左眼は裂孔原性網膜剝離で42歳時に受けた上耳側強膜のバックリングのため、横山法は困難で内直筋の後転を行いました。
術後、眼位は図のように改善され、満足されています。