• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

同側性複視を体験する

複視は両目で見ると視界のすべての対象が左右あるいは上下にズレて見える状態です。
相手の顔が2つ見えるだけでなく、隣あるいは上下の像が重なってみえる混乱視のためとても不快でつらい症状です。https://meisha.info/archives/27
付き添ってきた家族など正常者には理解が困難なそのつらさも、疑似体験してもらうと病気の理解に役立ちます。

フレネル膜プリズムによる複視の体験

斜視検査のプリズム順応試験 PATでは検眼枠に装着可能なフレネル膜プリズムhttps://meisha.info/archives/922を使用します。
この膜プリズムを使えば、例えば外転神経麻痺患者さんが苦しむ同側性複視https://meisha.info/archives/4508を正常者でも体験できます。

正常者での複視の疑似体験

具体的には図左のように20△(プリズムジオプター)と25△の膜プリズムを、左右ともにbase in (BI)でセットして正面の壁の時計を見てもらいます(模式図ではわかりやすいように膜プリズムではなく通常のプリズム形態で示しています)。
時計の像は両眼とも中心窩(図のf)鼻側網膜に投影されるので、左目では左方の耳側視野に、右目では右方の耳側視野に見えて、両目で見ると同側性複視になります。
図下段中央はこの試験眼鏡枠を通して図上段中央の時計をスマホカメラで撮影した写真です。
左の眼鏡枠内に写る時計の像はこのメガネで体験できる同側性複視の左の時計の像を示し、右の枠内の像が同側性複視の右の像に当たります。

ちなみに交差性複視を体験しようとすれば、膜プリズムをbase out (BO)にしますが、そうすると正面の時計が左目の右方の鼻側視野に写り、そのために左の検眼枠内に時計を示そうとすれば、右方向にズレて撮影しなければならないことを図右下に示してあります。