[複視]という主訴での患者紹介はよくあります。
[複視]は通常[片目ではひとつなのに両目でみると、ものが左右あるいは上下、斜めにズレてふたつに見える]両眼性複視を指し、片目を手で隠してもらえば症状が消えることで確認できます。
一方、老視や乱視で文字がぼやける場合、患者さんは[二重にみえる]と訴えるので、これを誤って複視として紹介してくることが、特に眼科以外の診療科の医師にみられます。https://meisha.info/archives/8
この場合は片目を隠しても見え方の不調は変わらないので[ニセの複視]です。
[二重にズレてみえるのは両目でみるときだけで、片目を隠せばひとつになる]ことは眼科医の常識です。
ただし主訴として記載するには、さらに踏み込んでズレの方向まで記載しましょう。
両眼開放で対面する眼科医の顔が[左右にズレて見える]のか[上下にズレて見える]のかを確認して、[主訴:水平複視]または[主訴:上下複視]と記載すべきです。
さらに[水平複視]であれば[片目を隠して左右の相手の顔のどちらが消えるか]を確認します。
右目を隠して右の顔が消えれば同側性複視、左が消えれば交差性複視です。https://meisha.info/archives/365
[上下複視]の場合は右目を隠したときに上、あるいは下いずれの像が消えるのかを確認します。
上が消えれば[右眼像は上]と病歴に記載します。
右下斜視の場合に[右眼像は上]になりhttps://meisha.info/archives/365、たとえば甲状腺眼症https://meisha.info/archives/423による右眼の上転制限などでよく見られます。
その場合[主訴:上下複視(右眼像が上)]のように記載します。
真の複視には左右、上下だけでなく像が時計回りあるいは反時計回りに回転するズレのこともあります。
回旋複視と呼ばれ、右眼像の上部が右方向に回転するものは[外方回旋ズレ]、左方向に回転するものは[内方回旋ズレ]と表現します。
特に上下複視に伴って多くみられます。
文字での記載は難しいので、右目に赤ガラスのメガネをかけて棒状白色灯を見た際の、赤と白の棒の位置関係をスケッチした絵で記録するとわかりやすいです。https://meisha.info/archives/2457
[主訴:上下複視(右眼像が上で右眼像は内方回旋)]との記載であれば完璧です。
(ちなみに右眼像が内方回旋している際は右眼像からみると左眼像も内方回旋していて、患者さんのどちらかあるいは両側の目が外方回旋しているときに生じます。)