両目で見ると壁の時計の像が左右に2つ分かれて見えるのは水平複視https://meisha.info/archives/8です。
その際、右目を隠すと右の像が消えれば同側性複視、左の像が消えれば交差性複視と呼ばれます。
図は右の外転神経麻痺の場合です。
外転が弱いので右目は左の方を向いています。
すると正面の時計は右網膜の中心窩よりも左側の鼻側網膜に像を作ります。
ここは本来、正面よりも右方、つまり耳側視野にあるものが映る場所です。
そのため右目からの情報を受け取る脳の部位では、正面の時計が右方の耳側視野に存在するように感じます。
その結果、図下段のように左視野の中心に映る時計と右視野の耳側に映る時計の2つが自覚され、同側性複視を生じます。
一方、右の動眼神経の部分麻痺や核間麻痺で右内直筋が働かず、右目が外側(右方)を向くと、右目にみえる時計の像は中心より左側にできます。
左側の像が右目の像なので交差性複視と呼ばれます。
上下複視でも同様です。
図は右目の下直筋麻痺によって右目が上を向いています。
そのため正面の時計の像は右目の上方網膜に映ります。
ここは本来、右目の下方視野の対象が像を結ぶ場所です。
そのため脳は左目に映る視野中心の時計と、その下方に映る右目の時計を同時に認識して、上下にズレる複視を自覚します。
この時、下の時計は上を向いている右目の像です。
複視には同側性/交差性の水平複視と上下複視のほかに回旋複視があります。
図で説明するのは省略しますが、右目が外方回旋すると右目の像は内方回旋します。
具体的には水平に提示されたボールペンが、右目では左下がりに傾いてずれると言います。
複視の診療の仕方については下記綜説に詳しく記載しました。
飯島裕幸 (2018) “主訴からみた診断の進め方、複視” 眼科 60(10): 1033-1036.