• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

雪目と電気性眼炎

晴れた日のスキーや屋根の雪降ろし作業の夜に両眼が痛くなって眠れず、夜間救急外来を受診する原因のひとつは雪目(雪眼炎)です。
庄司純: 電気性眼炎(紫外線角膜障害). 日本医事新報:46.2020

蛍光色素のフルオレセインナトリウムhttps://meisha.info/archives/283で角膜を染めて青い光を当てると、黄色に染まる点状表層角膜症(SPK: superficial punctate keratopathy)が観察されます。https://meisha.info/archives/608

雪目は紫外線障害

雪目は紫外線UV: ultraviolet lightによる角膜上皮障害です。
太陽光からのUVのうち上方から直接眼に届く大部分は上まぶたによってブロックされますが、波長が短く散乱されやすいUVは、下方の雪面から跳ね返って大量に目に入るためです。

紫外線による障害は重層扁平上皮である角膜上皮最下層の基底細胞の分裂阻害です。
その結果、細胞供給が一時的に途絶え、上に積み重なる角膜上皮が脱落して眼痛を生じるのは多くの場合、スキーや雪降ろしの後、数時間経過した夜間になります。
雪面からだけでなく海面のきらきら光るさざ波も紫外線を散乱させるので、海釣りの後にも同様機序でSPKを生じます。

電気性眼炎

紫外線による角膜上皮障害は溶接時に発生する紫外線から眼を守るための防護マスクをかぶらずに作業をした後にも生じます。
紫外線は電気ではありませんが、溶接の際に高電圧の電気を使用するため、溶接工の目の紫外線障害は電気性眼炎electric ophthalmiaとも呼ばれます。
Atkinson SC: SNOW-BLINDNESS: Its causes, effects, changes, prevention, and treatment. Br J Ophthalmol 5:49-54.1921