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sagging eye 症候群 SES の病態

sagging eye 症候群 SES 眼窩プーリーの老化による劣化が原因です。
MRIで確認できる眼窩プーリーの異常が左右対称性であれば、遠見内斜視による小角度の同側性複視(DPEまたはARDE)を、非対称であれば上下回旋複視(CVS)を生じます。https://meisha.info/archives/5103

眼窩プーリーの異常とSES

眼窩プーリーの異常はどのようにしてSESの症状につながるのでしょうか?
眼窩プーリーは4直筋を輪状に取り囲むリング状組織(focal pulley ring)とそれらを結ぶ帯状のバンド組織(pulley sling)か ら成ります。
國見敬子, 後関利明: Sagging eye syndromeとは何ですか? 臨床眼科 76:171-5.2022
このうち前者に含まれる外直筋プーリーと後者に含まれるLR-SRバンドは、いずれもコラーゲンが多く平滑筋に乏しいため、老化による劣化を生じやすいとされています。
國見敬子, 後関利明: 眼窩pulleyとその異常. 眼科 63:1179-83.2021

外直筋プーリーの下垂による作用ベクトルの変化

図左は正常左眼を耳側からみた図です。図右のSES眼ではLR-SRバンドが菲薄化して延長し、その結果外直筋プーリーが下垂しています。

正常眼の外直筋の作用(黒実線矢印)は耳側後方に水平に向かいますが、SES眼では下耳側に向かい、これをベクトル分解すると、外転作用は正常眼よりも減弱し、新たに下転と外方回旋のベクトルを生じています。
前者はSES眼での外転制限を生じ、後者は下転と外方回旋を生じます。
この変化が左右眼で対称性であれば下転による影響は目立たずDPE(またはARDE)となり、非対称であれば外直筋プーリーの下垂が大きい側の目が下斜視となるCVSを生じると考えられます。
Chaudhuri Z, Demer JL: Sagging eye syndrome: connective tissue involution as a cause of horizontal and vertical strabismus in older patients. JAMA Ophthalmol 131:619-25.2013