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SSOH (上方視神経部分低形成)

正常眼圧緑内障(NTG)https://meisha.info/archives/812は日本人に多い緑内障の病型ですが、https://meisha.info/archives/4800その鑑別診断のひとつに、SSOH: Superior segmental optic hypoplasia(上方視神経部分低形成)があります。
NTGでは視野障害が進行しますが、視神経乳頭の先天異常であるSSOHにおける下方弓状視野欠損は非進行性と考えられていて、眼圧下降点眼薬など緑内障治療は不要です。
SSOHに特徴的な検眼鏡所見として表の4つが報告されています。
Kim RY et al: Superior segmental optic hypoplasia. A sign of maternal diabetes. Arch Ophthalmol 107:1312-5.1989

しかしこのうち②と③はアジア人では目立たないといわれています。
Wu JH et al: Superior segmental optic nerve hypoplasia: A review. Surv Ophthalmol 67:1467-75.2022

症例:27歳女性

両眼-8.5Dの強度近視で、矯正視力は1.5と良好でしたが、左眼の見えづらさを訴えて前医で視野検査を受けたところ、左眼の下方視野の異常がみつかり大学病院眼科を紹介されました。
両眼の視神経乳頭上方には広いNFLD Nervevfiber layer defect(神経線維層欠損)(図の黄色矢印はその境界)がみられ、網膜中心動脈の分岐は左眼で乳頭中心よりも上方(図の白点線矢印)に位置していました。
ハンフリー30-2視野は右眼では正常でしたが、左眼ではマ盲点から下耳側に伸びる弓状暗点を示しました。

OCTによるCpRNFL:  circumpapillary retinal nerve fiber layer (視神経乳頭周囲網膜神経線維層)解析では、両眼とも乳頭上方から鼻側にかけて網膜神経線維層が菲薄化していました。

このケースでは左眼が上記表の①④を示し対応する視野障害もみられましたが、視野障害が確認されない右眼でも④の乳頭上方の網膜神経線維層欠損がOCTにて示されたので、両眼のSSOHと考えられました。