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強度近視眼の近視手術

近視に対する手術治療のうち、角膜のカーブを弱めて近視度数を小さくするLASIK手術やフェムトセカンドレーザー手術については2020/9/26の[近視手術]https://meisha.info/archives/494で紹介しました。
このような角膜に対する手術は比較的軽度の近視に対して行われますが、より強度の近視に対しては水晶体をターゲットにする手術が行われます。

Fukala手術

歴史的には若者の透明な水晶体を取り除くFukala手術が有名です。
昭和54年に刊行された石原忍創著、鹿野信一改訂の[小眼科学 改訂第18版]の60頁には[18-20Dの強度の近視は水晶体を摘出することによって正視眼に近い屈折状態とすることができる(フカラFukala手術)]と記載されています。
Vincenz Fukala (1847-1911)が40歳以下の若い強度近視の目に対して行ったもので、手術により人工的無水晶体眼とすることで強度近視眼を正視眼に近づけました。
具体的には水晶体前嚢を切開し、その結果、膨化する水晶体皮質を種々の方法で吸収させました。
同時代の眼科学の大家であるDondersやFuchs、von Graefeらは、若年者を人工的無水晶体眼にすると調節力が失われるなどと反対しましたが、Fukalaは実際に手術を受けた患者さんが仕事につけるようになったことを示し、手術による現実的な利益は理論的な批判に勝るとしました。

文献

Schmidt, D. and A. Grzybowski (2013). “Vincenz Fukala (1847-1911) and the early history of clear-lens operations in high myopia.” Saudi J Ophthalmol 27(1): 41-46.

強度近視の目への水晶体嚢内摘出術

現在の白内障手術では当たり前のように眼内レンズを移植しますが、私が眼科医になった1970年代には眼内レンズはまだ一般的ではありませんでした。
チン小帯を切断して水晶体嚢に包まれたままの水晶体を丸ごと眼外に取り出す水晶体嚢内摘出術(ICCE: Intracapsular lens extraction)という手術が主流で、術後は眼内レンズのない人工的無水晶体眼になります。
そのため術後は多くの患者さんが強度の遠視となり、分厚い凸レンズのメガネをかけなければならず不便でした。
ところが強度近視の患者さんに限ると、手術で水晶体がなくなれば正視あるいは軽度の近視や遠視になり、裸眼あるいは普通の薄いメガネでよく見えるようになります。
白内障の濁りがなくなるよりも、近視の程度が軽くなるメリットのほうが強く感じられることも多く、強度近視の患者さんでは、白内障がわずかであってもこの白内障手術を行うことがよくありました。

強度近視眼に対する眼内レンズ移植手術

眼内レンズを移植するようになった現在でも同様の考え方のもと、強度近視の目に対しては白内障がわずかであっても、PEA/IOL手術を行って正視あるいは-3D程度の軽度近視にする手術が患者さんの利益になります。
しかも現在は、弱い度数の凸レンズあるいは凹レンズの眼内レンズを選択することで、近方または遠方を裸眼ではっきり見ることができます。

実際の症例

73歳のA子さんは2年前に右目の近視性黄斑症(https://meisha.info/archives/300参照)で受診しました。
左目は以前の黄斑出血後の網膜委縮で数年前からよく見えていません。
屈折は右-17D、左-13Dで白内障は軽度です。
右目の近視性脈絡膜新生血管(CNV)に対して、抗VEGF薬硝子体注射(https://meisha.info/archives/119を参照)を1年間に3回行い、矯正視力は0.2から0.6に改善しました。
最終の注射から1年経過した時点で眼底は安定していたので、メガネなしでは生活ができない不便さを解決するために、白内障は軽度でしたがPEA/IOL手術を勧めました。
患者さんは反対の右目が失明に近い状態でしたので手術には不安を感じていましたが、受けることになりました。手術後、
RV = 0.3 (1.0 X -3.5D)
LV = mm
となり、遠くは少しぼやけますが、夜間に起きた際にもメガネをさがす必要はなく、裸眼で本を読める生活に満足しています。
眼内レンズの手術によってメガネなしで生活できるようになったことは夢のようだと喜んでいただけました。

若年者の強度近視に対するフェイキックIOL

なお、若年者の強度近視眼に対しては、現在は水晶体を残して、その前に凹レンズの眼内レンズを挿入するフェイキックIOL(有水晶体眼内レンズ手術)が行われます。
調節力のある水晶体が残るので調節力を失う心配はありません。