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近視手術

軽度あるいは中等度の近視では遠くの景色がぼやけて見えても、メガネまたはコンタクトレンズで解決するので、多くの眼科医は病気とは認識していません。https://meisha.info/archives/300
しかし外見的な問題や煩わしさから、メガネやコンタクトレンズではなく、近視を手術で治したいと希望する人は少なくありません。

近視とは

近視ではない正視の目では遠くからの平行光線が、角膜と水晶体の凸レンズ作用によって網膜上に集光します(図上)。
それに対して近視では、角膜前面から網膜までの距離である眼軸長が目の凸レンズ作用に比較して長いため遠くの景色がぼやけます(図中央)。
そのため凹レンズのメガネやコンタクトレンズによって集光する位置を後方の網膜にずらす必要があります(図下)。

近視手術の戦略

近視には眼軸長が長くなる軸性近視と、角膜や水晶体の凸レンズ作用が強くなる屈折性近視の2種類があります。https://meisha.info/archives/933
多くの近視は軸性近視ですが、眼軸長を短くするのは困難で、現在行われる近視手術以下の2つです。
1. 水晶体の凸レンズ作用を弱める
2. 角膜の凸レンズ作用を弱める
1. の戦略には、白内障手術での眼内レンズの調整以外に、水晶体はそのままでその前に凹レンズの眼内レンズを挿入するフェイキックIOL(有水晶体眼内レンズ手術)があります。

エキシマレーザーによる角膜近視手術

2. の角膜をターゲットにする近視手術では、透明な角膜を正確に削ることができるエキシマレーザーを利用します。
最初に臨床応用されたのはPRK(レーザー屈折矯正角膜切除術)です。
角膜を削る量を中央から周辺に向けてなだらかに減らし、前方に凸の角膜の表面のカーブを弱め(曲率半径は大きくなる)ることで、角膜の凸レンズ作用を減少させます。

LASIK手術

しかしPRKでは角膜表面を覆う角膜上皮が一時的になくなるので、治療後数日はとても痛いという欠点がありました。
そこで角膜の表面には手をつけず、表層を薄くそいでフラップを作り、これをめくってその下にエキシマレーザーを照射して角膜フラップを元に戻すLASIK手術が近視矯正手術のスタンダードとなりました。
角膜表面には傷がないので痛みはほとんどありません。

フェムトセカンドレーザー

さらに角膜を削るのではなく、角膜内部に切開面を作ることができるフェムトセカンドレーザーを使い、角膜の内部から凸レンズ形の組織を抜き取る手術も一部施設では導入されています。
フェムトセカンドレーザーは千兆分の1秒という短い照射時間のパルスレーザーで、照射された角膜内部に小さな気泡が発生して、これをつなぐことで自由な形の切開面を角膜内部に作成できます。