スマホ画面の文字やTVの字幕、あるいは運転時の案内標識の文字を読むには良好な(矯正)視力が必要です。
視力は中心窩の機能で、形態覚である空間分解能の検査です。
中心窩の機能を評価する定量的な検査には、ほかに時間分解能である中心フリッカー検査(CFF)、光覚に属する視野感度の中心窩閾値、色覚検査の100Hueテストなどがあります。
ただしCFFや100Hueテストのスコアは中心窩周囲も含めた少し広い範囲の黄斑機能を表していて、視力とは必ずしも相関しません。
これに対して器質的疾患では視力と中心窩閾値がある程度相関することをhttps://meisha.info/archives/5450で触れました。
黄斑疾患の中で中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)https://meisha.info/archives/1931は視力が比較的良好でも中心視野が暗いとの訴えをよく聞きます。
そこで筆者らは以前に網膜上膜ERM、網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫、中心性漿液性脈絡網膜症CSCの多数例で視力と中心窩閾値の関係を調べました。
Chiba N, , , , Iijima H: Foveal sensitivity and visual acuity in macular thickening disorders. Jpn J Ophthalmol 56:375-9.2012
3疾患のいずれでも矯正視力値(図の縦軸はLogMARで1.0が視力0.1、0が視力1.0)と中心窩閾値の間には正の相関がみられましたが、CSCでは視力値の低下に比較して中心窩閾値の低下が著しい結果でした。
3枚のグラフの回帰直線を1枚のグラフにまとめた下図で、たとえば少数視力0.5に相当するLogMAR 0.3の中心窩閾値をみると黄斑浮腫やERMに比べてCSCでははるかに低い値であることがわかります。
これはCSC患者が中心視野を暗く感じることの説明になっています。
逆に患者本人が訴える中心視野の暗さに比較して、矯正視力は比較的良好だともいえます。