細隙灯顕微鏡検査や眼底検査で異常がみられない[原因不明の視力不良]例が紹介されることがあります。
静的自動視野計のハンフリー中心30-2または10-2検査で中心暗点や半盲の傾向があれば、視神経疾患や頭蓋内疾患のほか、オカルト黄斑ジストロフィhttps://meisha.info/archives/4711など眼底正常な網膜疾患を疑うきっかけになります。
一方、検査のたびに視野異常のパターンが大きく変動したり、暗点の範囲や位置が10-2と30-2で一致しなかったりすれば、器質的障害のない心因性視覚障害https://meisha.info/archives/1188や詐病、作為症、身体症状症https://meisha.info/archives/3887などを疑うことになります。
器質的障害の疾患とそうでない疾患の鑑別に中心窩閾値が役立つことがあります。
中心窩閾値は視野検査の前に、ダイアモンド状に配置された4点固視灯の中央に視標を提示して、up-and-down法にて中心窩での光覚感度を調べる検査で、結果は、視野結果の左上隅に図のように示されます。
矯正視力が中心窩での形態覚を評価するのに対して、中心窩閾値は光覚を評価しています。
ただし正常で33-37dB程度とされる検査値は、正確には閾値ではなく感度(閾値の逆数)です。https://meisha.info/archives/867
本ブログでこれまでに紹介した矯正視力不良症例の中心窩閾値を表に示しました。
オカルト黄斑ジストロフィhttps://meisha.info/archives/4711では0.2というかなり低い矯正視力を反映して29/28dBという低い感度です。
これよりも軽度の視力低下だった優性遺伝性視神経萎縮の例https://meisha.info/archives/3743では31/30dBという正常に近い感度でした。
右眼のみが強度近視緑内障https://meisha.info/archives/523だったケースでは25/35dBと感度の明らかな左右差がみられました。
一方、器質的障害が否定される身体症状症https://meisha.info/archives/3887では0.4という視力であっても35/36dBという正常な感度が記録されています。
ところで[中心窩オフ]という検査結果のついた紹介患者さんを送ってこられた診療所に[中心窩閾値を測定したほうがよいですよ]とアドバイスしたところ[当院のHFAは中心窩閾値を測定できない機種です。価格が200万円ほど高くなるので、1段階機能を落として購入しました。]との返事がきました。
調べてみると表のように720のモデルは中心窩閾値を検査できない機種のようです。https://www.maycare.net/pdf/kensa/hfa2.pdf