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オカルト黄斑ジストロフィ OMD の OCT 所見

蛍光眼底造影検査や眼底自発蛍光写真も含めて、検眼鏡的には黄斑部に異常がみられないのに、両眼の視力が低下していれば、視神経疾患や弱視、心因性視覚障害などを疑います。
しかし、黄斑部の機能低下がハンフリー中心10-2視野などで示され、黄斑部視細胞の微細形態の異常OCTでみられ、さらに病歴から緩徐な進行性の悪化が推定される場合、オカルト黄斑ジストロフィOMD: occult macular dystrophyを疑う必要があります。
OMDの多くはRP1L1遺伝子異常による常染色体顕性(優性)遺伝を示します。

OCT で OMD を疑う所見

2015年から指定難病に加わった黄斑ジストロフィには6つの特異病態が含まれ、https://meisha.info/archives/3495 OMDはそのひとつです。
その診断には、全視野ERGが正常で、多局所ERGでの黄斑部の反応減弱が必要ですが、中心窩付近でのOCT像の特徴的な変化も診断に有用とされています。
すなわち視細胞錐体外節先端部を示すIZ: interdigitation lineの消失と、視細胞内節エリプソイドを示すEZ: ellipsoid zoneの不明瞭化です。
黄斑ジストロフィの診断ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:424-42.2019
さらに超高解像度OCTによるOMDの視細胞外節異常の詳細な観察結果が報告されています。
Tsunoda K, Hanazono G: Detailed analyses of microstructure of photoreceptor layer at different severities of occult macular dystrophy by ultrahigh-resolution SD-OCT. Am J Ophthalmol Case Rep 26:101490.2022

症例:53歳女性

若い頃は矯正して1.0の視力がありましたが、5年前の眼鏡作成時、眼鏡店でこれ以上の視力は出ないといわれ、両眼で0.7のメガネ視力にて免許がかろうじて更新できました。
今回、免許更新に備えて再度眼鏡店で検査したところ、眼科受診をすすめられて、原因不明の視力低下として近医眼科から大学病院を紹介されました。

初診時所見

視力:右 0.04 (0.2 X -4.5D cyl -1.25D Ax 165)
左 0.04 (0.2 X -3.0D cyl -2.25D Ax 15)
角膜水晶体はクリアで、眼底所見と眼底自発蛍光写真(図上段)には明らかな異常はみられません。
ハンフリー10-2視野中心窩閾値は29/28dB(正常では32dB程度以上)、両眼とも中心部4点のパターン偏差が-5~-6dBと低下していました。

全視野刺激網膜電図 full-field ERGは異常ありません。

OCTでは両眼とも視細胞錐体外節先端部を示すIZが確認できず、視細胞内節エリプソイドを示すEZが不明瞭化していました。

症例のまとめ

1. 両眼眼底正常
2. 緩徐進行性の視力低下
3. 全視野ERG正常
4. IZの消失とEZの不明瞭化
家族歴には明らかなものはなく、多局所ERG検査は行えていませんが、以上の結果からOMDの可能性が極めて高いことを説明しました。
黄斑ジストロフィの難病指定を受けるには多局所ERGが必要で、検査可能施設への紹介を提案しましたが、希望されませんでした。