ある程度以上の大きさの霰粒腫の治療は原因となった貯留油脂の除去手術で、成人であれば外来で局所麻酔下の切開incision掻爬curettage (I&C)を行います。https://meisha.info/archives/4166
しかしまぶたへの局所麻酔注射を怖がる乳幼児~小児での対応は悩ましい問題です。https://meisha.info/archives/2467
無麻酔での迅速な切開圧出は2-3歳までであれば3人がかりで押さえつけられるので可能です。
野田実香: 小児の霰粒腫治療のコツ 眼科手術 35:263-7.2022
一方、3歳以上では局所麻酔の可能性をさぐることになります。
4カ月前からの右上眼瞼の腫瘤はA眼科で麦粒腫とされ、抗菌薬の眼軟膏では改善しませんでした。
1カ月前にはB病院眼科で霰粒腫として穿刺されましたが内容物の排出はなく、全麻での手術をすすめられてY大学病院眼科を紹介されました。
右上眼瞼縁の褐色の腫瘤はすでに急性期を過ぎた時期の霰粒腫と考えられましたが(図左上)、重瞼溝の中に隠れず外見的に目立つので(図左下)家族も手術を希望されました。
無口な女児でしたががまんできるとの本人の表明もあったので、一緒に入室した母親に患児の手を握ってもらい外来のベッドで局麻手術を開始しました。
上眼瞼を翻転して円蓋部結膜下にE入りキシロカイン1%を27Gの針で注射することができ、皮膚側にも注射できたので、挟瞼器をかけて病巣部を水平に切開後、内部の寒天状の硬さの脂肪を掻き出しました。
1週間後、皮膚に赤みは残りますが(図右上)、重瞼溝内に隠れて外見的には目立ちません(図右下)。
病理検査では皮下に脂肪滴と多核巨細胞を含む類上皮細胞がみられ、リンパ球、形質細胞、好中球が浸潤する肉芽腫性炎症で霰粒腫に矛盾しない所見でした。