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結膜下出血後に消失した結膜嚢胞

結膜嚢胞https://meisha.info/archives/2632注射針で穿刺排液しても通常再発します。
江口功一:結膜嚢胞、In知っておきたい眼腫瘍診療(眼科臨床エキスパート). 東京: 医学書院.259-61. 2015
そのため目立つケースでは手術で摘出します。https://meisha.info/archives/2647
下記ケースでは予定された摘出手術の数カ月前に穿刺排液を行った際に、不幸にも広汎な結膜下出血を生じました。
しかしその結果、幸いにも嚢胞が消失し再発もなく手術を中止できました。

症例:61歳女性

1年前にも右眼の耳側球結膜に結膜嚢胞を生じ、筆者が外来を担当するA病院眼科を受診しました。
自覚症状を欠くため経過みるよう指示したところ2週間以内に自然に吸収消失しました。
翌年の7月に再度結膜嚢胞を生じ、今度は異物感があるため、25G針で嚢胞内液を穿刺吸引しました。
しかし2か月後の9月には嚢胞液が再貯留して再発したので、摘出手術目的でY大学病院眼科を紹介しました。

Y大学病院紹介時

10月のY大学初診時、右耳側結膜に長径5mm程度の多房性の結膜嚢胞がみられ(下図左)可動性のないことは硝子棒で確認できました(下図中央と右)

局麻での結膜切開、嚢胞切除を5カ月後の3月に予定しましたが、患者さんはそれまでの症状緩和のために再度の穿刺吸引を希望されました。
処置を受け持ちの若手眼科医にまかせたところ、穿刺時に結膜血管を損傷したためか、大量の結膜下出血をきたしました(下図左)

出血自体は1-2週間で吸収することを患者さんに説明して、翌年3月の手術まではA病院で筆者がみることにしました。
A病院眼科を受診した1か月後の11月、出血は吸収され嚢胞もフラットになっていました。
さらに3か月後の2月にも耳側結膜は血管の増生がみられるものの、ほぼフラットな状態で嚢胞再発の兆候はみられませんでした(上図右)
結膜下出血に伴う炎症で嚢胞内腔が癒着し、さらには再発も抑制されたと判断して3月に予定されたY大学での手術は中止にしました。