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結膜嚢胞の処置

結膜嚢胞と診断されるものは、成因嚢胞壁の組織学的違いから以下の3者に分類されます。https://meisha.info/archives/2632
1. 封入嚢胞
2. 貯留嚢胞
3. リンパ嚢胞
ただし、臨床的な鑑別は必ずしも容易ではなく、診断の確定には手術で得られる切除標本の病理検査結果を待つ必要がある場合も少なくありません。
3者の違いを意識した上で治療方針を考える必要があります。

結膜封入嚢胞の診療方針

このうち最も頻度の高い封入嚢胞についての対処法について専門家が具体的に記載しています。
江口功一: 結膜嚢胞. In: 大島浩一 & 後藤浩 (Eds): 知っておきたい眼腫瘍診療(眼科臨床エキスパート). 医学書院, 東京, 259-261, 2015.

経過観察

外見的に目立たず、異物感などの症状もなければ経過観察とします。
封入嚢胞は無制限に増大することはないとされています。

穿刺排液

注射針で内容液を吸引すると膨らんだ結膜はフラットになり、一時的に見た目はよくなります必ず再発します。
これを繰り返すことで封入嚢胞の周囲組織への癒着を生じて、将来の手術を困難にするリスクがあります。

注射針による嚢胞壁の吸引抜去

眼球結膜下で可動性がある封入嚢胞では27Gの注射針で嚢胞を突き刺し、内容液を吸引するつもりで、嚢胞壁まで吸引しながら引き抜けることがあります。

手術

癒着のない可動性のある封入嚢胞であれば、少し離れた部位の眼球結膜を切開して、嚢胞を押し出すようにして全摘出できます。
下図左の可動性のある嚢胞は角膜寄りに結膜を切開して、そこから嚢胞を丸ごと押し出して、右のように摘出できました。

癒着のある封入嚢胞の手術

癒着のある場合は破嚢させないよう注意して嚢胞壁を残さないように一部の結膜ごと切除します。
インドシアニングリーンICGやトリパンブルー嚢胞壁を染色、あるいはヒーロンVで嚢胞を安定化させて全摘出を目指すと報告されています。
高橋京一: 粘弾性物質を用いた結膜嚢胞摘出術. 臨床眼科 74: 682-684, 2020.
下図左は左眼下耳側結膜嚢胞の術前写真、右は術中、ICGで嚢胞壁を染色した写真