結膜嚢胞には封入嚢胞、貯留嚢胞、リンパ嚢胞が区別されます。
3者は見た目は類似しますが、嚢胞壁の起源は異なります。
図は下記からの引用した正常の結膜組織写真です。
小幡博人: 結膜. In: 後藤浩 & 小幡博人 (Eds): 眼病理アトラス. 総合医学社, 4-5, 2020.
封入嚢胞は、結膜上皮が結膜固有層に入り込んで閉鎖腔を形成するものです。
半球状の隆起性病変としてみられ、迷入した結膜上皮由来の数層の非角化上皮から成る嚢胞壁内に、ケラチンやムチンなどを含む液体が貯留します。
カバーする結膜上皮層との間に癒着がなければ、可動性があって硝子棒などで結膜下を移動させることができます。
横井則彦: 結膜リンパ管拡張症と結膜嚢胞. あたらしい眼科 33: 1607-1608, 2016.
下図の2枚の写真は同一症例で、結膜下を嚢胞が移動しました。
副涙腺には結膜円蓋部のクラウゼ腺と眼瞼結膜の瞼板付近のウォルフリング腺があり、いずれも導管は結膜嚢に開口します。
結膜貯留嚢胞はその排出導管が閉塞し、涙液が貯留して膨らんだものです。
したがって嚢胞壁は結膜上皮ではなく涙腺の導管上皮です。
可動性はありません。
江口功一: 結膜嚢胞. In: 大島浩一 & 後藤浩 (Eds): 知っておきたい眼腫瘍診療(眼科臨床エキスパート). 医学書院, 東京, 259-261, 2015.
結膜固有層にはリンパ管があり、これが拡張すると数珠状の透明構造を呈してlymphangiectasia(リンパ管拡張症)と呼ばれます。
結膜弛緩症https://meisha.info/archives/2212の病理組織中にしばしば見られ、その原因としても重要です。
Watanabe A et al: Clinicopathologic study of conjunctivochalasis. Cornea 23: 294-298, 2004.
リンパ嚢胞はこれが単発性に拡張したもので、嚢胞壁はリンパ管の内皮細胞から成ります。