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読書に必要な近見視力

どの程度の視力低下なら超高齢者に白内障手術を勧めるか?

超高齢者(85-90歳以上)は日常生活でも活動性に乏しく、また手術に対する身体的予備力があまりないので、それなりの白内障があっても手術を勧めるかどうかの判断を迷うことがあります
目立つ白内障でも本人が不自由を訴えなければ手術を勧めないというのはひとつの考え方です。
ただし細かい文字が読めなくなって新聞や書物からの情報量が減ると認知症進行のリスクが増すので、新聞などが読めない程度にまで進行した場合は、少し無理をしても手術を勧めたほうがよいと考えられます。
その場合の近見視力のレベルはどの程度になるでしょうか?

新聞、本の文字サイズ

印刷された文字はpt(ポイント)の数字で表示されます。
実測してみると、新聞の文字は10 – 11pt文庫本9 – 10pt、かなり細かい字だと感じられる広辞苑の文字は5.5pt程度です。(図はパソコンで印刷した各ptの文字を新聞、文庫本、広辞苑に貼り付けてスキャンした画像です。)

広辞苑はともかくとして、8ptの文字が楽に読める視力であれば、新聞や文庫本を読むのに不自由はなさそうです。

近見視力表

通常の視力検査では5または3メートルの距離から見るランドルト環https://meisha.info/archives/295の切れ目の方向を答えます。
これに対して読字視力の検査には図の近見視力表眼前30cmの距離で使用します。

8ptの文字を読むのに必要な視力

下図は上記の近見視力表の視力0.3の文字列の両サイドにパソコンで印刷した7-9ptの文字を貼り付けたものです。
0.3の近見視力があれば8ptの文字が読めることがわかります。

片目の遠見矯正視力https://meisha.info/archives/1514が0.3以上であれば、適切な近用メガネ(老眼鏡)を使用することで新聞や書物からの文字情報は取得できることになります。
実際に患者さんにこれまで尋ねた経験では、矯正視力が0.3-0.4程度しかない高齢者でも新聞は読めているようです。