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黄斑から離れたBRVOの黄斑合併症

黄斑浮腫を生じるBRVO(Branch Retinal Vein Occlusion:網膜静脈分枝閉塞症)https://meisha.info/archives/552の原因は通常、黄斑からの血流を集める静脈枝(〇)での閉塞です。

黄斑をカバーしない静脈枝(△)鼻側に向かう静脈枝(□)の閉塞では、黄斑に影響が及ぶことは通常ありませんが、まれに黄斑にSRD(Serous Retinal Detachment漿液性網膜剥離)硬性白斑を生じることがあります。
Takahashi K et al: Massive macular hard exudates associated with branch retinal vein occlusion. Jpn J Ophthalmol 49:527-9.2005

症例:61歳男性

Aさんは人間ドックで右眼のBRVOを指摘され、B眼科を受診しました。
最初1.0だった右眼矯正視力は1カ月前にSRDのため0.5に低下しました。
そこで抗VEGF薬を硝子体注射しましたが、改善ないためY大学病院を紹介されました。

初診時所見

右矯正視力は0.5で、その原因は中心窩周囲の硬性白斑(図左上段矢印)SRD(図左下段)です。
黄斑から離れた部位に淡い網膜出血(図左上段★)がみられ、これはFA(フルオレセイン蛍光造影検査)で蛍光漏出を示す上耳側静脈から上方に向かう枝(図中央★)のBRVOによると考えられました(前医での抗VEGF薬注射の影響で漏出の程度は軽減していたようです)。
この静脈枝からの漏出液が黄斑に貯留したと考えて、漏出部位に対するレーザー光凝固を行いました(図右)

2か月後

黄斑部のSRDは消失(図左下段)したものの硬性白斑が濃縮して(図左上段)視力は0.1に低下しました。
その後、硬性白斑は徐々に吸収して3年後には消失(図中央上段)しましたが、中心窩の瘢痕萎縮(図中央下段)のため視力は0.5にとどまりました(図右端はそのときの眼底自発蛍光で無蛍光https://meisha.info/archives/342の凝固斑が観察されます)。