nucleosideのひとつデオキシグアノシン(図上段左)にリン酸基 Ⓟ が3個付加されたデオキシグアノシン三リン酸 dGTP(図上段右端)は、dATP, dTTP, dCTPなど他のnucleotideとともにDNA合成に利用されます。
単純ヘルペスウィルス HSV 角膜炎https://meisha.info/archives/169の治療薬、アシクロビル ACV: Aciclovir(図下段左)はデオキシグアノシンに似た構造をしています。

同様にリン酸化されたアシクロビル三リン酸 ACV-TPがDNAに取り込まれると、それ以後のDNA伸長が停止するためHSVウィルスのDNA合成を阻害します(図下段)。
ただし赤矢印の反応に関わるウィルス由来の酵素(HSVチミジンキナーゼ)が存在しない正常ヒト細胞のDNA複製には影響がないので安全性の高い薬剤だとされています。
しかし上皮型 HSV 角膜炎に対して1日5回点入するACV眼軟膏による点状表層角膜症 SPK https://meisha.info/archives/608の副作用は少なくないと報告されています。
岡本茂樹 他: アシクロビル眼軟膏の副作用調査. 臨床眼科 51:1112-4.1997
そのため下記ガイドラインの第3章 感染性角膜炎の治療、Ⅳ角膜ヘルペス、1.上皮型では
[投与期間は最長3週間を原則とし,上皮型の再発防止を目的とした継続投与は行うべきではない.]とされています。
感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版) 日本眼科学会雑誌 117:467-509.2013
さらに2023年改訂の本薬剤の添付文書中7. 用法及び用量に関連する注意には
[本剤を7日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。また、投与を継続する場合は副作用の発現に十分注意し、長期投与はできるだけ避けること]とあり、ACV眼軟膏を漫然と長期間点入しないよう注意を促しています。