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樹枝状に広がる角膜ヘルペス

単純ヘルペスウィルス(Herpes simplex virus:HSV)による角膜感染症は、HSV角膜炎または角膜ヘルペスと呼ばれ主要な角膜感染症のひとつです。
感染症とはいっても他人にうつることはありません。
HSVは子供の頃に皮膚や粘膜に初感染した後、その病変は一旦、治癒します。
その後、免疫機能が低下した際などに、潜伏感染していたウィルスが再活性化して角膜に病変を生じたものがHSV角膜炎です。

ウィルスが隣の細胞に順繰りに感染

この病気の診断のキーになる変化は樹枝状角膜炎という特徴的な像です。
フルオレセインナトリウムという蛍光色素で染めた後、青い光で角膜を照らすと、図のように枝分かれして黄緑色に光る不規則な線状の病変が鮮やかに確認されます。
木の枝のようにみえるので樹枝状と呼ばれますが、線の幅が広がるとインドネシアのセレベス島(現在はスラウェシ島)のような不規則に入り組んだ海岸線のようにみえるので地図状角膜炎と呼ばれることもあります。

樹枝状病変、地図状病変が特徴

それではHSV角膜炎に特徴的な樹枝状や地図状の変化はどうして生じるのでしょうか?
一般的にウィルス感染が成立するには、感染細胞から出た増殖ウィルスが次の細胞に容易に感染できるよう、生きた細胞が密集している必要があります。
肝臓では肝細胞が密集しているのでウィルス性肝炎が発症しやすいのです。
角膜上皮も、上皮細胞がコンパクトに詰まっているためにウィルス感染には好都合です。
HSVが1個の角膜上皮細胞に感染するとその細胞内でウィルス粒子が多数できます。
そのウィルス粒子が隣の細胞に感染するというプロセスを繰り返します。
このように隣合う細胞を伝わって広がるので、図のように線状で枝分かれする病変を示すのです。