飛蚊症 floater, myodesopsiaは、硝子体中を浮遊する混濁物が眼底に影を落として見える症状で糸くず、輪っか、ひも、すすなどが動いて見えると訴えます。
加齢性の後部硝子体剥離に伴うワイスリング(Weiss ring or glial ring) https://meisha.info/archives/446など生理的飛蚊症と、硝子体出血や網膜裂孔に伴う病的飛蚊症がありますが、いずれも原因は眼球内にあります。
一方、小雪様や砂嵐様と表現されるVSS: Visual snow syndrome(降雪視症候群)https://meisha.info/archives/3838は脳の活動に由来する異常視覚現象です。
以下はVSSの症状を患者さんが飛蚊症と訴えたことで診断に苦慮したケースです。
半年前から両眼にみえる細かいゴミが視界の邪魔をするとの訴えでA眼科を受診しました。
散瞳検査で硝子体中の混濁は確認されませんが、眼底下方の血管周囲に暗いふちどり(図、白矢印)がみられたため血管炎に伴う飛蚊症ではないかとして大学病院眼科を紹介されました。

しかし血管周囲の変化は網膜表面の反射の異常であるwhite without pressure: WWPに伴ってみられたみせかけの変化で病的とはいえません。
その他、眼内には異常はみられず、わずかの近視で矯正視力は正常です。
RV = 0.6 (1.2 X -0.5D)、LV = 1.2 (n.c.)
そこで飛蚊症だという本人の訴えについて再度詳しく尋ねたところ、両眼の視野全体の異常だと言います。
[砂嵐や小雪のようか?]と尋ねたところ[そのようにも見える]とのこと。
またVSSに特徴的な室内でのまぶしさや視覚保続(動くボールなどの軌跡が見える現象)の自覚もあることからVSSと診断しました。
生活上、大きな支障にはなっておらず、原因がわかって安心できたとのことで経過観察としました。