降雪視症候群 VSS: Visual snow syndromeは小雪様(あるいは砂嵐様、TVのホワイトノイズ様)の多数の点が視野全体を覆う症状から名付けられた異常視覚現象です。https://meisha.info/archives/3838
その診断基準は国際頭痛分類(ICHD: International Classification of Headache Disorders)の第3版https://www.jhsnet.net/kokusai_new_2019.htmlの付録(Appendix)に記載されていて、降雪視以外に4つの視覚症状が特徴的とされています。
1視覚保続(palinopsia)
2増強された内視現象
3光過敏
4夜間の視力障害(夜盲)
このうち視覚保続(palinopsia)は動く物体の軌跡が残像として図のように見える現象です。

また2. の内視現象は眼球内の構造が視覚的に知覚される現象で、硝子体中を浮遊する混濁物が見える飛蚊症https://meisha.info/archives/446も内視現象のひとつです。
正常者でも経験する有名な内視現象としてflying corpuscles (FLC)と呼ばれる現象があります。
これは晴天時の青空をバックに多数の粒子が飛び交って見える現象です。
FLCを自覚する目的で開発された機器としてBlue field entoptoscope: BFE(図左)があります。
右端の鏡筒を覗くと、青色光をバックに黒い尾のついた白色の粒子がFLCとして赤矢印のように多数動いて(図中央)、内視現象を容易に体験できます。

図右は覗いている目の黄斑部、中心窩周囲網膜の毛細血管網を示しますが、FLCはこの毛細血管内を流れる白血球(白丸)とそれに連なる多数の赤血球(赤丸)が、その奥の視細胞で知覚される内視現象です。
赤血球のヘモグロビンは青色光を通さないので黒く見える一方、白血球は通すので白くみえます。
BFEはかつて、白内障手術前の黄斑機能を推測する検査として使用されていました。
Sinclair SH, Loebl M, Riva CE: Blue field entoptic phenomenon in cataract patients. Arch Ophthalmol 97:1092-5.1979
また中心窩周囲毛細血管網の血流速度を測定することにも利用されました。
張野正誉: ブルーフィールド内視現象による黄斑部循環の測定. あたらしい眼科 10:2027-31.1993