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BRVO黄斑浮腫に対するグリッドレーザーPC

網膜静脈分枝閉塞症BRVO: branch retinal vein occlusionの主な治療対象は
1. 急性期の黄斑浮腫による視力低下
2. 晩期合併症である硝子体出血の予防
の2つです。
このうち2. の硝子体出血を予防するために行うレーザー光凝固 PC: photocoagulation 治療については前回、前々回解説しました。https://meisha.info/archives/2221https://meisha.info/archives/2237
一方、1. の黄斑浮腫に対する標準治療は現在では抗VEGF薬の硝子体注射です。https://meisha.info/archives/552
しかし抗VEGF薬が臨床に登場した2007年頃まではグリッドレーザーPCが黄斑浮腫に対する標準治療でした。

グリッドレーザーPC

BRVOの黄斑浮腫に対するグリッドレーザーPCの有効性は1980年代に行われたBVOスタディで証明され、その後、抗VEGF薬の登場までの長い間、標準治療の座を占めていました。
The Branch Vein Occlusion Study Group: Argon laser photocoagulation for macular edema in branch vein occlusion. Am J Ophthalmol 98: 271-282, 1984.
図は30年近く前に行われた中心窩外側半周のグリッドレーザーPC直後の写真です。
淡い灰白色の凝固斑が間隔を開けて格子状に配置されています。

グリッドレーザーPCの機序

黄斑浮腫は透過性の亢進した網膜血管から漏出した血漿成分が、浮腫液として網膜層内あるいは網膜下に貯留した状態です。
この浮腫液は網膜色素上皮RPE: retinal pigment epithelium細胞のポンプ機能によって吸収され、脈絡膜側に排出されます。
グリッドレーザーPCはこのRPEのポンプ機能を活性化して、浮腫液排出を促進するものです。
ただし、その視力改善の程度は抗VEGF薬硝子体注射に遠く及びません。

BRVOに対するレーザー治療の抗VEGF薬時代での位置づけ

最近まで多くの臨床研究にて、抗VEGF薬単独、レーザー光凝固、両者の併用の治療効果が検証されてきました。
その結論としてはBRVO急性期の黄斑浮腫に対するレーザー光凝固治療の役割はすでになくなったとされます。
瓶井資弘: 抗 VEGF 時代における網膜静脈閉塞症に対する光凝固の役割. 日本眼科学会雑誌 125: 979-990, 2021.