学童の近視進行を促進する最大原因は近業です。
両目が向いている黒板や教科書と目までの距離を視距離と呼びますが、視距離が30cm以下の近業の持続は調節ラグhttps://meisha.info/archives/2330や軸外収差https://meisha.info/archives/2337によって近視を進行させます。
一方、屋外活動で1日2時間以上、屋外光を浴びれば、近視進行は抑制されます。https://meisha.info/archives/2046
視距離とその際に目に入る光量は、図に示すクラウクリップ(Clouclip)というメガネに取り付ける軽量の装置でモニターできます。
Wen L et al.: Objectively measured near work, outdoor exposure and myopia in children. Br J Ophthalmol 104: 1542-1547, 2020.
クラウクリップを使用して近視学童の1日の視距離をモニターした様子が下記書籍で紹介されています。
大石寛人. 子どもの目が危ない. 43-48 (NHK出版新書, 2021).
図は学校での授業中の結果で、グラフ横軸は時間、縦軸は視距離です。
視距離が30cm以下は濃い棒で、それよりも遠方を見ている時は薄い棒で示されています。
近業が続いていても遠方視が細かく混じっているので、近視進行を促進する調節ラグはそれほど心配しなくてもよさそうです。
ところがメガネをかけてマンガを読みふけっている就寝前の時間は20-30cmの視距離が30分以上持続しています。
しかし上の図を見て疑問に思うことがあります。
例えば-3Dの凹レンズの近視メガネをかけた状態で近くを見ると、裸眼よりも近視度数の分(3D)だけ余計に調節が必要になります。
そうすると当然調節ラグも生じやすくなります。
上の図のように30分もの間、まんが本を見続けるのであれば、メガネははずして裸眼で読むべきではないでしょうか。
残念ながら近業持続時にメガネをはずせば近視進行が抑制されるという臨床研究のエビデンスはないようです。
是非そのような研究も行ってほしいものです。