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哺乳類の色覚の進化

色覚は昼間働く錐体の機能で、錐体オプシンを何種類持つかで2色型、3色型、4色型という色覚の次元が決まります。
当初4色型色覚だった脊椎動物では、進化によって4→2と次元が低下し、哺乳類では2色型色覚となりました。https://meisha.info/archives/3340
しかしその後の進化で、ヒトを含む霊長類では2→3と次元が上がり、3色型色覚を獲得しました。

ただしその機序は哺乳類が失った2つのオプシンのうちのひとつを復活させたのではなく、M/LWSオプシンをMオプシンとLオプシンに分化させて3色型を獲得したのです。
平松千尋. 第5章:サルの果物さがし:2色型と3色型の比較から迫る色覚の適応意義. In: 種生物学会編集. [視覚の認知生態学-生物たちが見る世界-]: 文一総合出版.115-50. 2014

哺乳類が2色型色覚になった理由

昼間働く錐体のオプシンは爬虫類や鳥類では4種類あって4色型色覚でしたが、恐竜が繁栄していた中生代(2億4700万年前から6500万年前まで)に誕生した哺乳類https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/dino/faq/r02067.htmlは、恐竜が活動する昼間を避けて夜行性となったことで、4種類の錐体のうちの2種類を失って2色型色覚になりました。

霊長類で3色型になった理由

恐竜時代が終わり新生代になって繁栄した哺乳類のうち、最も進化した霊長類であるサルの仲間は、昼間の森で樹上の果物を主食にするようになります。
その際にM/LWSオプシンhttps://meisha.info/archives/3340の重複とアミノ酸置換によってLオプシンとMオプシンを獲得https://meisha.info/archives/1727した個体は、緑の木の葉の間から見え隠れする赤や黄色の果実をすばやく見分けることができるので、生存上有利な形質として3色型の形質を獲得する進化をとげたのです。

2色型の先天赤緑色覚異常

ヒトの先天赤緑色覚異常の2色覚は2色型色覚で、異常3色覚も色覚特性は2色型色覚と類似します。
これら先天赤緑色覚異常は男性の5%という高頻度にみられるので、淘汰されるべき劣性の形質ではなく、多様性として維持されているとの考え方があります。
2色型色覚が維持されてきた理由として、樹上生活から地上におりて狩りをするようになったヒトでは、草の色でカモフラージュされた動物を見分けやすい点があります。
黄緑-黄色のモザイク様の草原の色が見分けられる3色型色覚よりも、それらがモノトーンに見える2色型色覚のほうが、そこに隠れる動物のシルエットを発見しやすいためです。
河村正二他. 第18章感覚にかかわる遺伝子. In: 井ノ上逸朗他, ed. ヒトゲノム事典: 一色出版.255-. 2021