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脊椎動物の色覚

ヒトの色覚異常の多くは先天赤緑色覚異常で、緑~黄緑~黄~橙~赤と変化する中、長波長領域の色の見分けが苦手です
遺伝子の異常によってL錐体とM錐体のいずれかが欠ける2色覚、あるいはどちらか一方が異常で両者の差がわずかとなる異常3色覚https://meisha.info/archives/1727のため、L、M錐体の入力差で違いを判断する緑から赤にかけての色の見分けが低下することが原因でした。https://meisha.info/archives/3312
それでは動物の色覚はどうなっているでしょうか?

ヒト、サル以外の哺乳類は2色型色覚

色の違いを認識するヒトの錐体はL、M、Sの3種類で、それぞれ視物質としてLオプシン、Mオプシン、Sオプシンを含みます。
このように色覚の次元は視細胞が持つオプシンの数に依存し、2色型色覚、3色型色覚、4色型色覚などと分類されます。
ヒトとサルを含む霊長類3色型色覚ですが、それ以外の哺乳類(ネコ、ネズミ、イヌ、ウマなど)はSWS1の系統とM/LWSの系統の2種類のオプシンしか持たない2色型色覚です。
ちなみにヒトのSオプシンはSWS1MオプシンとLオプシンはM/LWSに属します。
夜行性のマウス(齧歯類)の錐体細胞は少数ですが、SWS1に属するマウスSオプシンとM/LWSに属するマウスMオプシンを有していて2色型色覚と考えられます。
興津経雄, 加藤克紀: マウスの視覚に関する行動的研究の動向. 筑波大学心理学研究44:7-15.2012

哺乳類以外の脊椎動物は4色型色覚

一方、哺乳類に進化する以前の脊椎動物、すなわち魚類、鳥類、爬虫類の多くは、SWS1とM/LWSに加えてSWS2とRH2というグループのオプシンを持っているので4色型色覚です(両生類は例外でRH2を欠如する)。
SWS2は短波長領域、RH2は中波長領域に反応するオプシンです。
河村正二他. 第18章感覚にかかわる遺伝子. In: 井ノ上逸朗他, ed. ヒトゲノム事典: 一色出版.255-. 2021

SWS1に属するヒトのSオプシン(440nm)は可視光領域に最大吸収波長がありますが、鳥類のSWS1は紫外線領域に最大吸収波長があります。
緑など中波長領域の光に反応するRH2は哺乳類では失われましたが、霊長類ではM/LWSオプシン を、長波長のサブタイプであるLオプシンと中波長のサブタイプであるMオプシンに分化させることで、3色型色覚を復活させました。
なお色覚に関係しない杆体で発現するオプシン(ロドプシン)はRH1で、いずれの生物種でも保存されています。