• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

度なしプリズムメガネ

メガネを掛け慣れない高齢者

遠視高齢者への遠用メガネhttps://meisha.info/archives/5310、や軽度眼位ズレ患者へのプリズムメガネhttps://meisha.info/archives/5100などは、うまく使いこなせれば、快適な視生活が期待できます。
しかしそのようなメガネを処方しても、メガネに慣れずに使用されないままのケースが少なくありません。

症例:80歳男性

Oさんは5年前に両眼のPEA/IOL手術を受け視力は良好だったものの、両目でみると違和感がありました。
右眼の網膜上膜ERM https://meisha.info/archives/1863の影響ではないかとして追加の硝子体手術を受けましたが、症状が改善しないとのことで筆者の診療施設を受診しました。
裸眼視力は両眼とも1.0ですが、左上斜視による軽度の上下複視が確認され、これが違和感の原因だと推測されました。

そこで左眼に2△base downのプリズムをいれた検眼メガネを試しがけしてもらうと、すっきり見えることを確認したうえで、度なしのプリズムメガネを処方しました。

1か月後

プリズムメガネの使用感を確認するために受診してもらいました。
メガネは前回受診後すぐに作成して、運転時にかけたところみやすいことを実感したとのことですが、常用はせず車の中においたままで、最近はあまり使用していないとのことです。

プリズムメガネを常用しない理由

その理由を尋ねたところ[マスクをした上からかけるとメガネが曇る]との返答がありました。
しかし運転中にマスクをする必要はなく、家庭内でもマスクなしなので、メガネを常用しなかったことの言い訳のようで、[若い頃からの正視でメガネを掛け慣れていない]というのが本当の理由のようです。
見えにくさの原因が最初は右眼のERMによるためと判断されてビトレクトミーを受け、さらにその後、上下ずれのわずかの複視が原因だと診断されて、4万円もかけてプリズム組み込みメガネを作成したOさんですが、メガネで症状が解決して安心すると、上下ズレの見えにくさはそれほど気にならなくなったのではないかと考えられます。

近視や乱視で遠用メガネを常用している高齢者であれば、そのメガネにプリズムを組み込めば無理なく常用できて快適にすごせるのでしょうが、Oさんのような正視の場合、度なしのプリズムメガネを常用させることの難しさを経験させられました。(Oさんは白内障手術の前も正視または軽度遠視だったようで、若い頃はメガネに無縁の方でした。)
メガネを掛け慣れていない軽度遠視の高齢者が遠視矯正の遠用メガネを常用できないことhttps://meisha.info/archives/3607と共通する現象のようです。