黄斑前膜は40歳以上の4%にみられるポピュラーな黄斑疾患です。
Miyazaki M et al.: Prevalence and risk factors for epiretinal membranes in a Japanese population: the Hisayama study. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 241: 642-646, 2003.
英語ではepiretinal membrane: ERMでこれを日本語に忠実に訳した網膜上膜や網膜前膜、黄斑上膜などの病名でも呼ばれます。
主な症状は像がゆがんで見える歪視(ワイシ)で眼科医は変視症と呼びます。
変視症は黄斑円孔の目でもみられ、中心に集中するようなピンクッションのゆがみですhttps://meisha.info/archives/236が、黄斑前膜ではコンピュータ画面のエクセルの表の罫線が波打つようにゆがみます。
黄斑前膜は黄斑部の網膜と硝子体の境界にできる増殖膜です。
この膜と網膜表面の内境界膜(ILM: internal limiting membrane)の間には癒着があるので、膜が収縮すると下層の網膜は引っ張られてしわになります。
その様子は蛍光造影写真の網膜血管像(図右)のひきつれでよくわかります。
しわの様子は網膜の断面をみる光干渉断層計OCT像で、網膜中層の内顆粒層の波打ち像としても観察されます。
また正常では凹んでいる中心窩陥凹が消失して、黄斑中央が肥厚します。
視細胞の内節はOCT像ではEZ (ellipsoid zone)と呼ばれるラインで示されます。
中心窩にあたるEZの部分が球状の高反射を示すcotton ball signは視細胞に牽引が及んでいる所見と考えられています。
Tsunoda K et al: Highly reflective foveal region in optical coherence tomography in eyes with vitreomacular traction or epiretinal membrane. Ophthalmology 119: 581-587, 2012.