• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

落屑症候群の疑問 1:脆弱チン小帯の理由

落屑症候群と偽落屑症候群

落屑症候群XFS: exfoliation syndromeでは、落屑物質 XFM: exfoliation materialと呼ばれる白色のフケ様物質が、水晶体前嚢中央や周辺部に付着して観察されます。

PE、PEX 、PXSなどと略された以前の病名:偽落屑症候群 pseudoexfoliation syndromeは現在では使われません。https://meisha.info/archives/3952

落屑症候群に関わるさまざまの疑問

落屑症候群は昔から謎に満ちた病態でした。
眼のサイエンス:眼疾患の謎]と題されて2010年に初版が発行された分担執筆の書籍には、表に示す110個の疑問に関して当該分野の眼科専門家の考え方が披露されています。
(この書籍は山梨大学医学部図書館に所蔵されています)
眼のサイエンス、眼疾患の謎(根木昭 編集)、文光堂. pp88-93, 114-115. 2010

このうち前房隅角水晶体に関する19個中4個は、XFSに関する以下の疑問です。
1. 落屑物質は何か?
2. 落屑症候群であっても眼圧が上昇しない例の存在理由
3. 片眼性の落屑症候群が存在するのは何故か?
4. Zinn小帯が弱い理由

XFSではチン小帯に付着するXFMが構成線維を溶かして断裂させる

XFS眼のチン小帯は脆弱なため、水晶体偏位や脱臼https://meisha.info/archives/2302、また白内障手術の際のチン小帯断裂や術後のIOL脱臼https://meisha.info/archives/2562を生じます。
その原因はXFMに含まれる蛋白分解酵素(カテプシンB)によるチン小帯蛋白の分解です。
毛様体の無色素上皮細胞間隙での起始部(下図赤〇部)、水晶体前嚢での接着部(下図赤□部)、および後房内のチン小帯中間部(下図赤楕円部)のいずれにおいてもチン小帯線維束の断裂とそこに付着するXFM中のカテプシンB電子顕微鏡画像と免疫電顕画像で示されました。
Schlotzer-Schrehardt U, Naumann GO: A histopathologic study of zonular instability in pseudoexfoliation syndrome. Am J Ophthalmol 118:730-43.1994