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落屑症候群 XFS の疑問3:色素散布と隅角色素沈着

続発緑内障の主要原因のひとつ、落屑症候群(XFS: exfoliation syndrome)https://meisha.info/archives/3952では、散瞳時の前房内に色素浮遊がみられ、隅角検査では線維柱帯の色素沈着増強やSchwalbe線前方のSampaolesi 線が有名です。
緑内障診療ガイドライン(第 5 版). 日眼会誌 126:85-177.2022中p98, 102, 103
落屑症候群PE と略される偽落屑症候群はかつての病名)で白色の落屑物質以外に黒色色素がふえるのはどうしてでしょうか?

症例:76歳男性

左眼は8年前に白内障手術を受けた後、緑内障の点眼を続けても20-30mmHgの範囲で変動する眼圧上昇がみられていました。
2年前から左眼のIOLがズレ始めたため、亜脱臼IOLと眼圧上昇の両者に対する手術目的で大学病院眼科を紹介されました。
矯正視力は0.7/0.06、眼圧は20/36mmHg、右眼水晶体には落屑物質がみられます。
左眼のIOLは下方に偏位し(図左)、瞳孔中心の混濁前嚢が視力不良原因と考えられます。
隅角検査ではSampaolesi 線を伴う色素沈着が目立つ開放隅角(図右)です。

左眼はXFSに伴うチン小帯断裂で生じたIOL亜脱臼および続発開放隅角緑内障と診断され、IOL摘出、IOL強膜内固定、ロングチューブシャント手術(アーメド)が予定されました。

XFSの隅角色素沈着の起源

XFS眼での隅角線維柱帯の色素沈着およびSampaolesi 線や、散瞳時に前房内に浮遊するメラニン色素は虹彩裏面を裏打ちする2層の色素上皮のうちの後上皮細胞層https://meisha.info/archives/5383に由来します。
XFS でみられる落屑物質には蛋白分解酵素が含まれ、これが付着するチン小帯蛋白を分解するためチン小帯が脆弱になることはすでに解説しました。https://meisha.info/archives/5369
XFSの組織学的研究では虹彩後面にも落屑物質が沈着し、同様に含まれる酵素による消化作用で色素上皮細胞の細胞膜が障害され、細胞内のメラニン色素が散布されること(以前は偽虹彩炎pseudouveitisと呼ばれていた)が以下のように記されています。
The mechanism of melanin liberation is related to degenerative changes and cell membrane ruptures of the posterior pigment epithelial cells due to extracellular PEX material accumulation.

Naumann GO et al: Pseudoexfoliation syndrome for the comprehensive ophthalmologist. Intraocular and systemic manifestations. Ophthalmology 105:951-68.1998