脂漏性角化症seborrheic keratosisは老人性疣贅(ゆうぜい、verruca senilis)とも呼ばれ、母斑と並ぶ眼瞼良性腫瘍の代表です。https://meisha.info/archives/695
1. 限局性で境界明瞭な隆起、
2. しわ形成を示す表面は凹凸不整、
3. 色調は灰白色~褐色~灰黒色、
4. しばしば表面から睫毛を生じる
という外見的特徴から臨床診断します。
基底細胞癌https://meisha.info/archives/4891などの悪性腫瘍が否定的であれば腫瘍部のみをそぎ切るopen treatmentでhttps://meisha.info/archives/4292治療しますが、ときに再発します。
高村浩. 尋常性廃贅、脂漏性角化症(老人性廃贅). 眼科臨床エキスパート:知っておきたい眼腫瘍診療: 医学書院.214-7. 2015
数カ月前に右上まぶたの赤いできものに気づき、2カ月前に他医を受診したところ悪性の可能性もあるとしてY大学眼科外来に紹介となりました。
右の上眼瞼中央よりやや外側に桑の実状の褐色腫瘤がみられ、睫毛脱落はありません(図左端)。
患者さんの話では紹介状をもらってからの2カ月間で大きくなったとのことです。
脂漏性角化症の可能性が高いと考えてその日のうちに外来で局麻下、挟瞼器でまぶたをはさんでhttps://meisha.info/archives/218腫瘤のみをそぎ切り病理検査に出しました。
その際まぶた中央部の睫毛がうすくなるのを危惧して手加減したため、1週間後の検査では赤矢印部位に腫瘤の一部が残存しました(図左から2番目)。
病理検査では脂漏性角化症でした。
2年後、腫瘤が大きくなったとして再度受診、残存腫瘍が水平方向にやや拡大して褐色調が増していましたが(図左から3番目)、顔面の写真(図右端)では外見的には目立たず、[さらに拡大して目立つようようなら再度切除しましょう]と話して外来フォローとしました。