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眼科専門医試験の病理組織問題

眼科専門医試験には病理組織の写真をみて解答する問題が毎回2-3題出題されます。
そこで最近3年分の出題内容を調べてみました。

2023年、問題10:45/F 眼瞼基底細胞癌

眼瞼基底細胞癌の多くは図のような潰瘍を伴う結節型で、上眼瞼よりも下眼瞼に多くみられます。
転移はまれで生命予後は比較的良好ですが、深部に浸潤する特徴があります。
腫瘍は胞巣構造をとり、胞巣周辺にみられる核の柵状配列peripheral palisadingが特徴です。
小幡博人: 眼瞼腫瘍の診療の要点. 日本眼科学会雑誌 123:785-804.2019

胞巣とは:多くの病理学の教科書に当たっても、[胞巣]の定義を記述しているものは見当たりませんでしたが、下記の教科書に以下のように記載されていました。[上皮性腫瘍では腫瘍細胞が互いに接着した細胞集塊(胞巣という)を形成して増殖するが、非上皮性腫瘍では細胞同士の接着性はなく胞巣はみられない]
渡辺照男. カラーで学べる病理学 第5版: ヌーヴェルヒロカワ. p162, 1999

2023年、問題13:45/M 結膜乳頭腫

結膜乳頭腫は隆起性(ポリープ状)の良性上皮系結膜腫瘍です。https://meisha.info/archives/3848
肉眼的には各乳頭の中心に赤い血管の芯がみられるカリフラワー状です。
組織学的には肥厚した上皮が乳頭状に枝分かれして、その芯の部分に血管がみられます。

2022年、問題1:76/M 眼瞼脂腺癌

脂腺癌https://meisha.info/archives/691の多くは瞼板内のマイボーム腺由来で、黄白色の結節を形成します。
瞼板内に胞巣状に増殖する腫瘍細胞の核は大きく明瞭で、その細胞体は脂質を産生するため明るく見えます。
眼瞼皮膚表皮や結膜上皮を置き換えるように浸潤するpagetoid spreadと呼ばれる病型では慢性結膜炎と誤診されることがあります。https://meisha.info/archives/2474
小幡博人: 眼瞼腫瘍の診療の要点. 日本眼科学会雑誌 123:785-804.2019

2022年、問題4:52/M サルコイドーシスの結膜生検

問題文では症例の主訴は左眼霧視で、両眼の眼圧上昇(38/28mmHg)が記載されています。
サルコイドーシスは肺、眼、リンパ節、皮膚など多臓器に非乾酪性の肉芽腫病変を形成します。
眼病変としては豚脂様角膜後面沈着物、前房内炎症細胞、虹彩結節、隅角結節、塊状の硝子体混濁、網膜血管周囲炎、蝋様網脈絡膜滲出斑などがみられます。
診断には生検による肉芽腫の証明が必要で、肉芽腫には類円形核と豊富な胞体を有する類上皮細胞のほかにリンパ球や多核巨細胞が含まれます。

2021年、問題2:84/M 脂漏性角化症

脂漏性角化症(seborrheic keratosis)は,境界明瞭、凹凸のある黒褐色の隆起性病変です。
良性腫瘍ですが急速に増大することもあります。https://meisha.info/archives/1213
組織学的には表皮が肥厚し、過角化による偽角質嚢腫がみられます。
小幡博人: 眼瞼腫瘍の診療の要点. 日本眼科学会雑誌 123:785-804.2019

2021年、問題3:48/F 結膜悪性黒色腫

悪性黒色腫malignant melanomaメラノサイト系の悪性腫瘍で眼科領域では眼瞼皮膚、結膜、ぶどう膜に生じます。
腫瘍細胞は紡錘形のspindle cell type類円形のepithelioid typeに分類されます。
免疫染色ではS-100, Melan-A, HMB-45などが陽性になります。
加瀬諭. 結膜悪性黒色腫.眼病理アトラス(眼疾患アトラスシリーズ4): 総合医学社.80-81. 2020

2021年、問題6:81/M アミロイドーシス

問題文で血中IgG4の高値が示されIgG4関連眼疾患を連想させますが、ダイレクトファーストスカーレットDirect Fast Scarletで染色される生検材料が決め手でアミロイドーシスと診断されます(ただしアミロイドの検出として有名なのはコンゴー赤染色と偏光顕微鏡下で緑色の複屈折)。
アミロイドーシスは線維構造をもつ不溶性の異常蛋白が全身臓器に沈着して機能障害を引き起こします。