調節緊張は近業による毛様体筋の緊張で、屈折度がマイナス側(近視側)に偏位する状態です。
一方、調節けいれんは毛様体筋の不随意で不安定な持続的収縮によって、著しい近視化を示す状態です。
間欠的な輻湊けいれんの合併で内斜視を示すこともあります。
中島伸子, 不二門尚: 調節異常(調節緊張・調節痙攣,IT眼症など)の診断と治療について. 眼科 64:453-8.2022
南雲幹: 調節の異常・心因性視覚障害を伴う近視 あたらしい眼科 39:301-6.2022
RV = 0.06 (0.8 X -10.5D)
LV = 0.09 (1.0 X -8.5D)
1カ月前から急に遠くのものがぼやけて見えなくなるとともに、両目が寄るようになったとして近くの病院眼科を受診したところ、上記のように裸眼視力は不良で、強度近視の状態でした。
また眼位は斜視角が変動する内斜視で、遠見、近見ともに同側性複視を訴えます。
眼内には明らかな異常はみられず、それまでは裸眼でよく見えていたとのことです。
前年の学校の視力検査でも両眼A判定https://meisha.info/archives/295でした。
スマホ内斜視(急性後天共同性内斜視AACE: acute acquired comitant esotropia)https://meisha.info/archives/269を疑われY大学病院眼科を紹介されました。
しばらく凸レンズの検眼レンズを装用させた後に視力を検査する雲霧法を行いましたが、以下のごとく裸眼視力不良の近視の状態でした。
RV = 0.05 (1.0 X -3.5D)
LV = 0.07 (1.0 X -3.25D)
屈折度数の変動が大きいため、まずはサイプレジン点眼を行いました。
その結果、1時間後の他覚的屈折検査では両眼ともほぼ0Dで、視力は両眼とも1.0 (n.c.)となり眼位も正位で複視は消失したので、内斜視を伴う調節けいれんと診断しました。
再度の病歴聴取にてクラス内での友達関係に由来する心因性が原因として疑われました。
当面は毎日のサイプレジン点眼にて経過みる方針としましたが、裸眼では近方視でぼやけるため学習や読書に支障があります。
そこで当面は出来合いの+3Dのメガネ(老眼鏡)https://meisha.info/archives/3069を近見時のみ使用するよう指導しました。