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スマートフォンによる急性内斜視

スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機など、デジタルデバイスの使い過ぎによって急性に発症する内斜視が注目されています。
医学的には急性後天共同性内斜視(AACE: acute acquired comitant esotropiaと呼ばれるタイプの内斜視です。
AACEには
1. 融像遮断によるもの
2. 心身のストレスが誘因となるもの
3. -5D以下の近視の低矯正によるもの
4. 頭蓋内病変によるもの
が以前より知られていました。
5番目としてスマートフォンなどの使用に関連して発症するAACEがスマホ内斜視として最近注目されています。
吉田朋世、仁科幸子 (2019). “急性後天性共同性内斜視.” あたらしい眼科 36: 995-1001.
その発症機序はまだ明らかではありません。

コロナ禍休校でみられた急性内斜視

最近経験したケースは学校から帰宅して寝るまでの5-6時間、スマホを使用していた15歳男子です。
2020/2/28、コロナ対策の全国一斉休校が始まると、1日のスマホ使用は17時間になりました。
3月下旬、起床時から水平複視を自覚し、近くの眼科医で急性内斜視と診断されました。
スマホの使用制限を指示されましたが改善せず、4カ月後大学病院の眼科を紹介されました。
視力は裸眼で両眼とも1.0で、調節麻痺下屈折検査では遠視ではありません
外転を含めて眼球運動には制限はみられませんが、同側性複視を自覚し、像のズレは側方視でも不変です。


遠見、近見ともに25△base outの眼位ズレで、10 + 15 △base outのプリズム装用で複視は消失します。
図上は右眼固視、は左眼固視の写真です。
経過をみても改善なく、後天性の共同性内斜視の診断で、両眼内直筋後転の斜視手術を施行し、正位となりました。