加齢に伴い正視や遠視の目で手元の文字などが見えにくくなるのは、調節力が低下する老視https://meisha.info/archives/6071のためです。
年齢とともに減少する調節力https://meisha.info/archives/314の図を再掲しました。
調節力はメートルで記載した近点、遠点それぞれの逆数の差で単位はジオプター(D)です。
調節力(D)= 1/近点 - 1/遠点

老視による調節力の低下は近点(ピントが合う最も目に近い点)が遠ざかって遠点(ピントが合う最も目から遠い点)に近づくためです。
図左に正視、近視、遠視での遠点と近点を示し(遠視の遠点は眼球後方https://meisha.info/archives/6064)、右の表にそれぞれの調節力の計算例を示しました。

加齢性調節障害である老視の進行に伴い、メガネの適切な使用法を患者さんにアドバイスすることは眼科医の重要な使命です。
図上段のうすいピンクで示す若い時期には調節力は十分にあり、正視(A)と軽度の遠視(L)は手元のスマホから遠くの景色までの広い範囲の対象に裸眼でピントを合わすことができます。
適切なメガネを掛けた近視(F)も同様です。
しかし加齢に伴って調節力が減少、すなわち近点が遠ざかって遠点に近づくと、中段(薄い青)や下段(薄い紫)で示すようにピントの合う範囲が狭まり老視の症状が現れます。

正視や遠視では裸眼でスマホがぼやけるようになるので(B、M)、近用眼鏡が必要(C、N)になります。
近視でも遠用メガネをかけた状態(G)ではスマホがぼやけますが、メガネをはずせば大丈夫です(H)。
65歳以後は老視が完成して固定焦点となります。
正視(D、E)と近視(I、J)ではメガネ使用に関して、中段の老視初期と大きな違いはありませんが、メガネの常用に慣れている近視では遠近両用の累進レンズメガネhttps://meisha.info/archives/374も有用な選択肢です(K)。
一方、遠視では裸眼では遠くにもピントが合わない(O)ため、遠見で凸レンズの遠用メガネ(P)、近見でさらに分厚い凸レンズの近用メガネ(Q)が必要になります。
なお若い頃のメガネ経験がない正視と遠視が遠近両用メガネを使いこなすのはハードルが高くうまくいかないことが多いことを以前説明しました。https://meisha.info/archives/374