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老視(老眼)の基礎

老視(老眼)は目のピント合わせ機能である[調節]の加齢による低下です。
平均的には40代半ばくらいで手元のスマホの文字がぼやけるなどの症状に気づきます。
調節についての説明は、本ブログの
[過矯正メガネが原因の眼精疲労:2020/8/19]https://meisha.info/archives/259
[モノビジョンによる老視対応:2020/8/15]https://meisha.info/archives/188
にも記載しましたので参照ください。

老視では近点が遠ざかる

調節機能の良好な若い人の目では、オートフォーカスのカメラのように、遠くから近くまでピント合わせができます。

ピントの合う最も遠い距離を遠点、最も近くを近点と呼びます。
図の上段は近視でも遠視でもない正視の10歳の平均的な目です。
白抜き四角の右端が近点、左端が遠点です。
調節力はメートルで表した両者の逆数の差、すなわち1/(近点)-1/(遠点)で、単位はジオプター(D)です。
ただし正視の目の遠点は無限遠で1/(遠点)はゼロになるので、調節力は近点の逆数となり、10歳では0.1(メートル)の逆数で10Dです。
同様に40、45、55、65歳の調節力はそれぞれ5D, 3D, 1D, ゼロになります。

年齢と調節力

このように調節力は年齢とともに低下し、それをグラフに表すと図のようです。
調節力と年齢のグラフは報告者によって微妙に異なります。
図はAdler’s physiology of the eye 11th ed 2011 p41と
石原忍の小眼科学改訂18版p51を参考に作成しました。
調節力と年齢の関係は近視でも遠視でも同様ですが、正視以外では遠点の逆数を引く必要があります。
-3Dの近視の目の遠点は33センチメートル(1/3メートル)なので、近点が10センチメートル(1/10メートル)なら10から3を引いて7Dという調節力になります。
難しいのは遠視で、遠視の遠点は眼前にはありません(理論的には目の後方)。
遠視では無限遠を見ている段階で遠視度数だけ調節をしているので、調節力は近点の逆数に遠視度数を足すことになります。
たとえば+2Dの遠視の目の近点が33センチメートル(1/3メートル)であれば3に2を加えて調節力は5Dになります。

老視の症状は近視では軽く遠視では増強する

調節力の値から近点を求めることもできます。
1/(近点)-1/(遠点)= 調節力
ですから、近点は調節力に遠点の逆数を加えた値の逆数です。
これは近視では調節力に近視度数を加えた値の逆数、
遠視では調節力から遠視度数を引いた値の逆数になります。


具体的には平均的な調節力が5Dの40歳で、
-3Dの近視であれば、6+3=8の逆数の1/8メートル= 12.5センチメートル
正視であれば、5の逆数の1/5メートル= 20センチメートル
+3Dの遠視であれば、5-3=2の逆数の1/2メートル= 50センチメートル
が近点の位置です。

近視度数が強ければ、近点は近づくので、近くにピントが合わないという老視の症状は出にくくなります。
また遠視では正視と同じ調節力であっても近点は遠ざかるので老視の症状が増強します。
さらに遠視度数が調節力を超えれば、近点は無限遠を超える、すなわち裸眼ではどこにもピントが合わないことになります。