老視は加齢による調節力の低下です。https://meisha.info/archives/1507
多くの場合、裸眼では手元のスマートフォンの文字などがぼやけて読みづらくなります。
百円均一ショップなどには+1.0Dから+5.0Dまで0.5D刻みで、出来合いの老眼鏡が揃っています。
これをためしてみてスマートフォンが見やすくなれば老視の症状と考えてよいでしょう。
老視が進行して手元が見えにくくなった場合、正視または軽度の遠視の目であれば、出来合いの老眼鏡、あるいは眼科で処方される近用メガネで解決できます。
-3D以下の弱い近視の目では、メガネをはずすだけで近くはある程度見やすくなります。
しかしもう少し度の強い近視の目の場合や、弱い近視であってもメガネを外すのが面倒な場合は遠近両用メガネが便利です。
遠近両用メガネとしては、メガネレンズの下方に小窓のついた二重焦点レンズもありますが、現在の主流は累進屈折力レンズ(累進レンズ)の遠近両用メガネです。
いわゆる境目のないメガネレンズで、以前は商品名のバリラックスという名前で広く知られていました。
その後、累進多焦点レンズと呼ばれ、現在は累進屈折力レンズ(あるいは累進レンズ)という名称が一般的です。
メガネレンズの上半分が遠くにピントが合う遠用部で、近くにピントが合う近用部はレンズの下方の狭い部分です。
その間は累進帯と呼ばれてピントの合う距離がなだらかに変化します。
累進屈折力レンズは遠近両用メガネとして便利ですが、2つ欠点があります。
ひとつは累進帯の部分で像がゆがむことです。
最初のうちだけがまんしてかけ続ければ慣れますが、65歳以上の高齢者が初めてこのレンズを使うと慣れるのに時間がかかり、ゆがみの違和感を嫌って諦めることは少なくありません。
図は私の累進メガネ(遠用部は-2.5Dでadd +3.5D)を通して撮影した写真ですが、定規が曲がって見えるのがわかります。
遠くを見るにはレンズの中心より上を使用し、近くを見るにはレンズ下方を使用するので、視線を上下にうまく移動させる必要があります。
高齢者ではこの視線の移動への慣れに時間がかかることが欠点の2つ目です。
[せっかく作成した累進屈折力レンズメガネが使用されずにタンスの中]というのはよく聞かれます。
原因のひとつは、上記2つの問題点に対処できない高齢での使用開始のケースです。
しかし最も多いのは、若い頃メガネを掛ける習慣のなかった正視や軽度遠視の人たちです。
遠見主体の日常生活ではメガネなしでも支障がなく、本を読む時だけメガネをかけて常用しないため、慣れることができず、累進レンズメガネの使用を諦めるケースです。
そこでそのような患者さんには、累進メガネではなく、単焦点の近用メガネと必要があれば単焦点の遠用メガネを別々に処方するようにしています。