• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

お蔵入りになる累進レンズメガネ

老視は加齢による調節力の低下です。
多くの場合、裸眼では手元のスマートフォンの文字などがぼやけて読みづらくなります。
百円均一ショップなどには+1.0Dから+5.0Dまで0.5D刻みで、出来合いの老眼鏡が揃っています。
これをためしてみてスマートフォンが見やすくなれば老視の症状と考えてよいでしょう。

近用メガネ(老眼鏡)と遠近両用メガネ(累進屈折力レンズ)

老視が進行して手元が見えにくくなった場合、正視または軽度の遠視の目であれば、出来合いの老眼鏡、あるいは眼科で処方される近用メガネで解決できます。
-3D以下の弱い近視の目では、メガネをはずすだけで近くはある程度見やすくなります。
しかしもう少し度の強い近視の目の場合や、弱い近視であってもメガネを外すのが面倒な場合は遠近両用メガネが便利です。

累進屈折力レンズ

遠近両用メガネとしては、メガネレンズの下方に小窓のついた二重焦点レンズもありますが、現在の主流は累進屈折力レンズ(累進レンズ)の遠近両用メガネです。
いわゆる境目のないメガネレンズで、以前は商品名のバリラックスという名前で広く知られていました。
その後累進多焦点レンズと呼ばれ、現在は累進屈折力レンズ(あるいは累進レンズ)という名称が一般的です。
メガネレンズの半分から上が遠くにピントが合う遠用部で、近くにピントが合う近用部はレンズの下方の狭い部分です。
その間は累進帯と呼ばれてピントの合う距離がなだらかに変化します。

累進屈折力レンズはゆがむ

累進屈折力レンズは遠近両用メガネとして便利ですが、2つ欠点があります。
ひとつは累進帯の部分で像がゆがむことです。
かけていれば慣れますが、65歳以上の高齢者が初めてこのレンズを使うと慣れるのに時間がかかり、ゆがみの違和感を嫌って諦めることは少なくありません。
図は私の累進屈折力レンズ(遠用部は-2.5Dで+3.5Dの累進レンズ)を通して撮影した写真ですが、定規が曲がって見えるのがわかります。

累進屈折力レンズでは視線の移動が必要

累進屈折力レンズで遠くを見る際はレンズの中心より上を使用しますが、近くを見る際にはレンズの下方を使用するので、視線を上下にうまく移動させる必要があります。
欠点の2つ目はこの視線の移動にも高齢者では慣れに時間がかかることです。

使われない累進メガネ

眼科の外来で患者さんにメガネの有無を尋ねると、累進屈折力レンズのメガネを作成したけれど、現在は使用していなくて、タンスの中に眠っているという回答が多く聞かれます。
その原因のひとつは、高齢になって初めて使用開始したため、上記2つの問題点に慣れることができなかったケースです。
しかし最も多いのは、正視または軽度の遠視のために、若い頃メガネを掛ける習慣のなかった人です。
軽度の遠視であれば遠用部分の弱い凸レンズを使用すれば遠くもよく見えるのですが、普段の日常生活ではそれほど鮮明な遠景像を求めないのでメガネをかけません。
常用しないために累進屈折力レンズでのゆがみや視線の移動法に慣れることができず、使用を諦めているようです。
本を読む時にだけ累進屈折力レンズのメガネをかけている高齢者もよく見かけます。
そこで私はこのような若い頃にメガネ使用経験のなかった患者さんには、累進屈折力レンズではなく、単焦点の近用メガネと必要があれば単焦点の遠用メガネを別々に処方するようにしています。