屈折度数が左右の目で異なる状態は不同視と呼ばれます。
3D以上の不同視差をメガネで完全矯正すると、左右の網膜像の大きさの違いが融像範囲を超える不等像視https://meisha.info/archives/3780を生じるので、近視の不同視のメガネ処方では近視の軽い目に合わせます。
一方、片目がほぼ正視で他眼が近視の不同視のヒトは、若い頃はメガネなしの裸眼で遠くも近くも見ていますが、これは正視の目を使っています。
しかし40歳を過ぎて老視https://meisha.info/archives/314が始まると、正視の目での近方視が困難になり、無意識のうちに近視の他眼で近方視するようになります。
このように正視の目で遠方視、近視の目で近方視する状態はモノビジョンと呼ばれます。https://meisha.info/archives/188
モノビジョンの理屈を患者さんに理解してもらうと、不要な白内障手術を回避できることがあります。
受診動機は内科からの糖尿病網膜症のチェック依頼でしたが、以前、右の白内障手術を勧められたことに関して相談されました。
RV = 0.4 (0.8 x -1.0D cyl -1.5D Ax80)
LV = 0.9 (1.0 x 0D cyl -1.0D Ax95)
患者さんに手元の文字を読んでもらったところ、右を隠すと左目では読めませんが、逆にすると右目では読めます。
今度は壁の時計を眺めて左を隠すと右目では数字が読めませんが、逆にすると左目では読めました。
眼科医:[あなたの右目の白内障はそれほど強くなく、近視のため遠くはぼやけますが手元の文字は難なく読めます。一方左目は遠くににピントが合いますが手元の文字はぼやけます。遠くは左目、近くは右目と無意識のうちに使い分けているおかげでメガネなしで過ごせています。]
患者さん:[右目の手術はどうすればよいですか?]
眼科医:[もし右の白内障手術で遠くにピントの合う眼内レンズIOLを選ぶと、手元を見る際に老眼鏡が必要になり、手術したことを後悔するかもしれません。IOLは手元に合わせたほうがよいですが、それでは手術前の現在の状態とあまり変わらないでしょうから、まだ手術はお勧めしません。]