蜂窩織炎 phlegmone は蜂巣炎 cellulitis とほぼ同義で、皮膚科では真皮から皮下組織にかけての皮膚深部にびまん性に拡がる化膿性炎症(滲出物として好中球などの白血球や壊死した細胞から成る膿を多量に含む炎症で多くは細菌感染)を指します。
眼窩蜂巣炎 orbital cellulitis(日眼用語集第6版では眼窩蜂窩織炎ではなく眼窩蜂巣炎のみ掲載)は、眼窩隔膜 orbital septum よりも後方の眼窩内、軟部組織の急性化膿性炎症です。
林勇海. 眼窩蜂巣炎 細菌性. In: 外眼部アトラス: 総合医学社.264-5. 2020

ちなみに眼窩隔膜よりも前方の病変は眼瞼蜂巣炎または眼窩隔膜前蜂巣炎 preseptal cellulitisと呼ばれます。
戸所大輔: 眼窩蜂巣炎 眼科 62:1287-91.2020
これは眼瞼皮膚の脂腺や汗腺あるいはマイボーム腺関連の細菌感染である麦粒腫https://meisha.info/archives/596よりも広範囲に拡がる眼瞼皮下の蜂窩織炎です。
眼窩蜂巣炎では痛み(眼周囲痛、眼窩部痛)と開瞼が困難なほどの著しい眼瞼の発赤腫脹が特徴的です。

デマル氏開瞼鈎https://meisha.info/archives/176や開瞼器で開瞼すると結膜浮腫と充血がみられます。
眼窩内の外眼筋に炎症が及ぶと眼球運動障害による複視を生じます。
さらに眼窩内圧の上昇から眼球突出、眼球の変形や網膜皺襞を生じることがあり、その結果、眼圧が上昇して網膜中心動脈閉塞症CRAO https://meisha.info/archives/3687や視神経障害で視力の低下をきたすこともあります。
血液検査にて白血球増多やCRP(C-reactive protein C反応性タンパク質)上昇、血沈亢進などの全身炎症反応を確認し、CT、MRIにて眼窩内の炎症を確認することで診断します。
4日前からの両眼の眼脂に対して近医で処方された抗菌薬点眼をしていました。
前日起床時から左のまぶたが腫れて眼周囲の疼痛が強く大学病院を紹介されました。
左上眼瞼の発赤腫脹(図左)と結膜の充血浮腫(図中央)が著明で、左方視で複視を自覚しました(矯正視力は1.0/0.7)。
MRIでは眼瞼皮下(図右赤矢印)と涙腺周囲(図右黄矢印)に不均質なT2WIの高信号が確認されました。

血液検査で白血球数は正常上限の8600でしたが、CRPは3.9(正常 < 0.14)と高値でした。
左の眼窩蜂巣炎と診断してフロモックス(第3世代セフェム系抗菌薬ですが、黄色ブ菌や連鎖球菌に強い効果のある第一世代セフェムのほうがよかったかもしれません)の内服にて3日後には軽快しました。