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網膜中心動脈閉塞症 CRAO

網膜中心動脈閉塞症CRAO: central retinal artery occlusionは網膜内層を栄養する網膜中心動脈が血栓などで詰まって血流が停止する病気です。
フルオレセイン蛍光眼底造影検査 FAを行うと、網膜中心動脈に血流が入っていかないことがわかります。
図のケースでは静注後5分経過しても網膜動脈内に流入した造影剤はわずかで、網膜静脈は造影されません。
脈絡膜の栄養血管である短後毛様動脈は問題ないので淡い背景蛍光は正常です。

網膜中心動脈は網膜神経節細胞 RGCや双極細胞など、網膜内層の神経細胞を栄養しています。
脳の神経細胞と同様で、これらの細胞が虚血によって死に至ると、失われた神経機能は再生はしないため、通常は高度で不可逆性の視力、視野障害をきたします。

チェリーレッドスポットと網膜層構造

この病気の特徴は、中心窩の赤色を除いて周囲網膜が白濁するチェリーレッドスポットです(図左)。
これは網膜内層の神経細胞が虚血により浮腫混濁して白濁するものの、網膜内層が存在しない中心窩(図右)では本来の赤色調が残るためです(図左の眼底写真では発症後やや時間が経過したため、中心窩下方の白濁が目立たなくなっている)。
急性期のOCT像では虚血浮腫のため網膜内層の層構造が乱れます。
図左のOCTでは双極細胞が含まれる内顆粒層の低反射帯がはっきりしなくなり、それよりも内層の内網状層、神経節細胞層、神経線維層が高反射で境界不明瞭になっています。
網膜中心動脈に栄養されない視細胞を表す外顆粒層には大きな変化はありません。

飯島裕幸. 網膜動脈閉塞症. In: 田野保雄, ed. 眼科プラクティス 21 眼底画像所見を読み解く.326-31. 2008