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散瞳後の視力/視野検査

散瞳して眼底を観察した後、傍中心暗点などの確認のために中心視野検査をオーダーすることがあります。
中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィhttps://meisha.info/archives/3896と考えられた図の80歳女性(矯正視力は右0.03左0.6)の左眼の見え方を対座法https://meisha.info/archives/1973にて尋ねたところ、患者さんは[左眼では先生の顔はよく見える]との返答でした。

視力の良好な左眼でも傍中心暗点はあるはずと考え、10-2視野を行ったところ、萎縮部に対応する暗点が明らかになりました。
下図上段の黄色円が視野の範囲で、下段はこれに対応するように、左右はそのままで上下を反転https://meisha.info/archives/4318させた視野結果です。)

散瞳後の視力や視野検査は不可か?

受け持ち医に視野や視力検査を指示すると[散瞳しているのでできません]との返事が返ってくることがあります。
散瞳は視力や視野検査に影響するでしょうか?
散瞳検査で点眼するトロピカミド(ミドリン)には副交感神経遮断薬であるアトロピンhttps://meisha.info/archives/5133と同様、瞳孔径拡大調節麻痺の2つの作用があります。

瞳孔径拡大と視力検査

瞳孔径が大きくなると焦点深度が浅くなりピントは合わせづらくなりますが、屈折を正確に矯正すれば、未散瞳時に得られるのと同等の矯正視力を得ることができます。

瞳孔径拡大と視野検査

散瞳で眼内に入光する光量が増加すると視野感度全体が良好になります。
しかし緑内障特有の視野異常や黄斑疾患での暗点検出などの診断目的では支障ありません。
(ただし視野感度の全体的な上昇によってMD値などは良好になるので、同一ケースでの進行経過をみる際にはNGですが。)

調節麻痺と高齢者の視力視野検査

副交感神経を一時的に麻痺させる散瞳薬は瞳孔括約筋だけでなく、毛様体筋も麻痺させるので調節力は低下します。
しかし老視ですでに調節力のない多くの高齢者には影響しません。

調節麻痺と若年者の視力視野検査

若年者では調節が麻痺して老視と同じ状態になれば裸眼視力は低下しますが、検眼レンズで屈折矯正する矯正視力には影響ありません。
不同視弱視https://meisha.info/archives/2257調節緊張https://meisha.info/archives/354の幼小児で、より強力な調節麻痺作用のあるサイプレジンやアトロピンを点眼することで屈折と矯正視力がより正確に検査できることを考えれば、トロピカミド点眼後の矯正視力検査は問題ないはずです。